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倒れない大画面テレビ「VIERA」、地震の時だけ床に吸着する吸盤の仕組みを聞いた知らないと損!?業界最前線(5/5 ページ)

» 2025年02月22日 07時00分 公開
[河原塚英信ITmedia]
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意識しなくても、置くだけで防災対策

 ところで、パナソニックが初めて転倒防止スタンド搭載のVIERA「FX750」を発売したのは、2018年のこと。野村氏は、転倒防止スタンドの企画開発するまでの経緯を次のように語る。

 「東日本大震災の時、私は横浜のビルの中にいたのですが、長く激しい揺れを体験しました。デスクの下に潜り込み、それこそプリンターやファックスなどが机や台から滑り落ちていくのを見ていたんです。ものすごく恐ろしかったです」

 そうした体験をした方も多かったからか、「次にテレビに求めるものは何か?」というアンケートの結果も、それまでは「画質」や「音質」という項目が不動の上位だったが、「地震に強いテレビ」という項目が何年も上位に上がっていたという。その頃は大画面化も求められていた時だった。画面を大きくすれば、ますます地震の際の転倒リスクは上がる。

 さらに多くの人が、地震対策を求めている一方で、転倒防止措置を施しているかといえば、4割くらいの人が「やりたいけれどやっていない」状態だったという。

 「転倒防止措置をやりたい意識はあっても、やれていない人たち」をサポートしたいという気持ちが、転倒防止スタンドを企画するきっかけになりました」(野村氏)

転倒防止の訴求のため、気象庁の強震データを使用した実証実験が行われたと話してくれた、商品企画を担当する野村美穂氏

 「テレビの転倒防止をやりたくてもやっていない」という人が一定割合いるという状況は、おそらく今も変わらないだろう。地震が来るたびにテレビがぐらぐらと揺れて、対策をしなくてはと強く思う。だが対策を施す前に、地震の恐怖を忘れてしまう。

 たいていのテレビには、転倒防止のために、テレビをテレビ台などに固定するためのベルトなどが付属しているが、テレビ台や壁に穴を開ける必要があるなど、いざ取り付けようとなると、なかなか手間がかかる。そこで開発されたのが、吸盤を備えた転倒防止スタンドなのだ。

 VIERAの転倒防止スタンドは、ユーザーが特別な操作をしなくても、普段通りに設置するだけで地震対策ができる。防災は「意識してやるもの」と思われがちだが、設置するだけで、意識せずとも対策が採れているのが理想的だ。

 そしてVIERAに転倒防止スタンドが初搭載された2018年以降は、取り外し時に使うスイッチの位置を含めて、機能性やデザイン性がさらに向上。また搭載モデルも増え、現在では最大77インチの有機ELモデルにも採用されている。

 もちろんテレビの本質は、良い画質と音質で動画コンテンツを楽しめること。その基本を抑えつつ、知らない間に防災対策も採れるVIERAは、地震の多い日本に最適なテレビといえるだろう。

 なお、先日報道されたテレビ事業の売却検討について同社広報に問い合わせたところ「テレビ事業を含む課題事業に関しましては、抜本的な収益構造の変革に向けてあらゆる可能性を視野に検討しておりますが、売却・撤退も含めて現時点で決定している事実はありません」とコメントしている。

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