「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でリポートします。
Teslaの高度運転支援機能(レベル2)である「Full Self-Driving(Supervised)」(監視付完全自動運転、以下FSD)が米国、カナダ、メキシコなどに続き、中国でも始まりました。Xにおいて、「FSD、China」などのキーワードで検索すると、中国のTeslaユーザーによる車内からのFSD動画がいくつも投稿されています。
これまで、米国のユーザーが投稿しているFSD動画を羨望の感情を抱きつつ眺めてはいたのですが、その一方で、日本の都市部のような、狭い道路で歩行者、自転車、二輪車、自動車が混然一体となって通行するカオスな交通状況において、果たしてFSDの運用は技術的に可能なのか、という疑問も抱いていました。
しかし、上のXの投稿からも分かるように中国のFSDでの運行を見ていると、日本の都市部でも技術的には実現が可能なのでは、と思わせるに十分な場面が記録されています。つまり、中国においても、交通状況はかなりカオスな状態のところもあり、問題なく走っているように見えます。
2018年、筆者は中国の深センを訪れました。アテンドしてくれた知人のクルマやタクシーで市内や郊外を移動したのですが、そこで見た混沌とした交通状況や渋滞時の合流などは、日本の都市部よりもカオスな部分が見受けられました。そのような記憶もあり、今回、中国でFSDが解禁になったことは、「もしかしたら日本にも」と希望を持たせてくれるに十分でした。
上の深センの市街地の写真では一見整然と流れているように見えますが、場所によっては、マナー無視でノールックで割り込んでくるバイクの軍団に囲まれたり、自動車専用道路の合流では、我先にと鼻先を突っ込んで来る他車にヒヤヒヤしたものです。
TeslaのFSDは、AIによる大規模学習のたまものといわれています。実際に現実世界を走る主に北米のユーザーのクルマから学習データを得ているそうです。
少し前、SNS上のTeslaコミュニティーにおいて、日本ではFSDを実現するための走行データが集まっていないという言説が流れました。事の真偽は別にして、走行データが集まっていない点は、国外へのデータ持ち出しが禁じられている中国のFSDにおいても同様のはずです。
しかし、Teslaはそれを克服しました。イーロン・マスク氏自身がXにおいてその種明かしをしています。「インターネットで公開されている中国の道路や標識のビデオを使ってシミュレーションのトレーニングを行った」とポストしているのです。
驚きです。現実世界の走行データが不十分であっても。動画などから学習させればFSDを展開することができると明言しているわけです。であるなら、日本においても同様の開発手法でFSDを実現できるのではないでしょうか。
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