「僕ら商品企画グループのメンバーも初めて彼から提案を受けた時、すごくいいアイデアだと思いました。富士フイルムの『Xシリーズ』ブランドでこれまでのモデルでもエッセンス的に持っていたフィルムカメラのような体験をよりユニークな形で提供できる点が特に魅力的でした。そして、何より、このサイズと形ですね」
2in1機能を使った組写真の作例。同じシーンを時間経過順に並べてもいいし、全く違った2枚を並べても面白い。別々の2枚ではなく、1枚に2つのシーンが写った組み合わせの写真にすることで、物語性を持たせたり、雰囲気のある写真が手軽に撮影できるのが面白い面白いのは、ハーフサイズフィルムカメラから着想を得た縦構図の撮影と、ハーフフィルムを組みで現像する時のように、2枚の写真を左右に並べることで得られる“物語”のような表現。これらがアイデアの中心にあるコンセプトだった。そして、その2枚1組というコンセプトをより明確にするためのフィルムを送るレバーなどのギミック。
「1枚撮ったらフレーム切り替えレバーを操作し、もう1枚撮ると、その2枚が一つの組写真のようになる、というのは、フィルムを巻き上げるという行為を彷彿とさせる点も含め、すごくイメージしやすかったんです。一方で、1枚撮るごとに必ずレバー操作が必要で、常に組写真になる形にするのは、ちょっとコンセプトとして尖り過ぎてると感じたので、そういう部分は商品開発の過程で何度も議論し調整していきました」
確かに、縦構図の組写真というコンセプトを分かりやすく伝える手段として「ハーフサイズカメラ」という例えは分かりやすい。私のようなかつてのオリンパス「Pen」のハーフサイズカメラを知っている世代だと。ハーフサイズに馴染み過ぎていて、「デジカメでハーフサイズって?」と思ってしまいがちだが、例えとしての表現とすれば納得できる。
つまり、35mmのフィルムを半分使って1枚とするというハーフサイズの構造と、横構図の写真のサイズに縦構図が2枚並ぶと、そこに別の表現が生まれるかもしれないというアイデアを重ねたところが、このカメラの中核にあるということなのだ。
「1枚1枚の構図が多少ずれていたりブレていたりしても、組写真にすると物語性が出て、雰囲気のある写真に仕上がるところもいいと思いました。背面のLCDモニターのサイズが大きいと、良い写真を撮影しないといけないとプレッシャーを感じるという意見も発案したデザイナーの周囲の同世代の声としてあり、あえて縦型で小さめなサイズを選びました」
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