2021年9月に納車されたModel 3において、筆者は、令和2年度第3次補正予算「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」を申請し、80万円の補助を受けました。これは、当時環境省が実施していた補助事業です、この原稿を執筆している25年5月末時点では、令和6年度補正予算による補助事業が実施されており、Model 3の場合、ロングレンジAWD、RWDともに、87万円の補助金を受け取ることが可能です。
Model 3以外のEVにおける補助金は、銘柄ごとの補助金交付額にて確認することが可能です。最高額は90万円でトヨタbZ4XやレクサスRZ450eなどです。低く抑えられている車両には、ポルシェTaycanの12万円があります。補助額は、国産、輸入、車両価格の多寡といった単純な評価に基づくものではなく、各車両の環境性能、企業ごとの充電インフラ整備、整備体制といった多岐に渡る評価項目から算出されています。詳細は、CEV補助金における評価の基準について(令和7年度)において確認することが可能です。
EVに批判的な意見を言う人の中には、「補助金があるから売れる」と揶揄する向きもあります。確かにそういう側面があるのは否定しません。では筆者はどうでしょうか。Model 3を注文した21年5月当時、試乗担当のスタッフからは次のように釘を刺されました。
「今からの注文だと最短で9月下旬納車です。政府の補助金総額には上限が設けられているので、そのタイミングだと上限に達している可能性があります。大きな期待は抱かないでください」
実際、その前年度には、上限に達したタイミングと次の補正予算決定時のタイムラグから、補助金が出なかった事例もあったと記憶しています。しかし、筆者はそれを承知でModel 3を注文しました。補助金は、車検証が発行されてからでないと申請ができません。つまり、購入代金全額を支払い、事実上納車された後にしか申請できない仕組みです。
結果的には上限到達前に申請が通過してめでたく補助を受ける事ができました。ただ、振り込まれたのは申請から4カ月後です。筆者の感覚では、「補助金がないとEVは売れない」という見方はあまりに一方的過ぎるのではないかと思います。
ちなみに、トヨタMIRAIの補助金は145万3000円、韓国ヒョンデのネッソは215万5000円、ホンダCR-V e:FCEVは255万5000円と破格の厚遇を受けています。これらは、いずれも燃料電池車(FCV)であり、水素社会の推進という国策事業に合わせた評価基準も取り入れられているということなのでしょう。FCVは、現状、燃料の水素を製造、貯蔵、輸送、利用の各過程で相応の二酸化炭素を排出することから、一般的に言われているほどには環境に優しいとは思えません。
余談ですが、FCVが水素ステーションで水素を充填する際、水素の圧縮(約700〜820気圧!)や冷却(約−40℃!)といった形で電力を消費することにも思いを巡らせる必要があります。どれだけの電力を消費するかは、車種やステーションの方式や規模などにより異なり一概には言えないようですが、一般的に1充填あたり数十kWh程度必要との解説もあります。
仮に50kWhだとしたら、生涯電費が約150Wh/km(6.66km/kWh)の筆者のModel 3の場合、333km走行可能という計算です。水素の充填にそれだけの電力を消費するのであれば、最初からEVのバッテリーに充電した方が話が早いような......。
一方、Tesla専用の充電インフラ網、スーパーチャージャーは21年以降グローバルレベルで100%再生可能エネルギーによる電力供給を実現しています。並びに、筆者宅の電力は非化石証書100%構成で、実質的に再生可能エネルギーによる電気100%をうたっている小売事業者のものです。
筆者のこれまでの充電ポートフォリオを確認すると、自宅充電が約90%、スーパーチャージャーが約8%、残り2%が公共の急速充電ならびに普通充電です。こう考えると、FCVとEVを比較してどちらがエコなのか?といった議論が混迷を深めます。
Teslaユーザーのスーパーチャージャー利用率は自ずと高くなるはずなので、FCVよりもTeslaの方が環境に優しいのではなのかとも思えてきます。まあ、これを言うと、バッテリーの製造過程で二酸化炭素を排出するだろ!という意見も聞こえてきそうですが、それは否定しません。Teslaのインパクトレポート21年版には、Model 3およびModel Yの製造プロセスでは、同等の内燃機関車両(BMW 3シリーズなど)に比べて温室効果ガス排出量が多くなると明記されています。
しかし、その一方で6500マイル(1万460km)走行した時点で、同等の内燃機関のクルマよりもライフサイクル全体の排出量が少なくなる、ともあります。平均的なドライバーなら、1年〜2年弱で"元が取れる"計算です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR