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360度カメラ界にやってきた“大型新人”の実力は? 「DJI Osmo 360」を夏のサイクリングで試してみた(1/4 ページ)

» 2025年08月29日 17時00分 公開
[山川晶之ITmedia]

 360度カメラ界に“大型新人”が現れた。その名も「DJI Osmo 360」。ドローン大手の中国DJIが初めて投入する360度カメラで、8K動画や1億2000万画素の静止画が撮影できるスペックを持ちながら、コンパクトかつ183gと軽量なのもウリとなっている。

「Osmo 360」

 言うまでもなく、この分野のパイオニアはリコー「THETA」だが、現在トップを走っているのは中国Insta360だろう。最新のX5は同社の集大成のようなカメラで、11Kのオーバーサンプリングから生み出す8K映像、大型センサーを使ったクリアな夜間撮影、バッテリー持ちの改善など、カメラとしての足腰を鍛えてきた。

 そこに真っ向から勝負を仕掛けてきたのが本機だ。値付けも標準的な「スタンダードコンボ」で6万7100円と、X5(通常版の定価は8万4800円)よりも安く、市場を奪う気満々なのが伝わってくる。

センサーはわざわざカスタム

 本体を見ていこう。高さを抑えた箱型ボディに、サンドイッチする形でF1.9のレンズと1インチの「スクエアHDRセンサー」を両面に搭載している。X5よりセンサーは大きく、ボディは小さく、そして17g軽い。代わりにディスプレイは2インチの横型で、見やすさは縦型2.5インチのX5に軍配が上がる。底面は、マグネットタイプのクイックリリースが使えるので、DJIのアクションカム「Osmo Action」シリーズとアクセサリを共有できる。着脱も簡単だ。

左が「Osmo 360」、右が「Insta360 X5」。Osmo 360は体積比でX5の8割ほど

 このセンサー、実はOsmo 360用にわざわざカスタムしたもの。“スクエア”の名の通り正方形のセンサーで実際は1/1.1インチ。というのも、360度カメラは撮れる映像が正円なので、一般的なアスペクト比4:3のセンサーだと左右のエリアが余ってしまう。そこを削るように正方形のセンサーを使うことで、得られる映像は4:3の1インチと同じまま、ボディの小型化と省電力化を実現したという。

日本の夏に耐えられるのか

 フィールドに繰り出してみよう。ちょうど荒川サイクリングロード含め60kmほど自転車に乗る機会があったのでハンドルに取り付けてみた。当日の最高気温は33度のカンカン照り。となると「熱停止」が頭をよぎる。熱を吸収する真っ黒の本体に、ヘビーな8K撮影。熱を多く吸収し、熱を多く出す、小さなボディゆえ排熱もシビアと条件は厳しい。

自転車のハンドルに取り付けてみた。録画して数分すると省電力モードに移行する。写真のように録画時間のみ表示される

 なのだが、結果8K30fpsで70分以上連続で撮影できた。この「70分以上」というのも、360度写真を撮るために録画を一度止めたためで、もっと伸びた可能性もある。2〜3枚撮影して録画を再開したが、その後バッテリーが切れるまで録画が止まることはなく、トータルで102分の360度映像を撮影することができた。

 Osmo 360の公称バッテリー稼働時間は8K30fpsで100分なので、フィールドテストではわずかだが上回ったことになる。その後何度かテストしてみたが、いずれも90分台中盤辺りまで録画できた。より少ないバッテリー容量でX5の公称(8K30fpsで93分)か、それ以上の持ちを実現したあたり、電力管理がシビアなドローンを長年作っているだけのことはある。

Insta360 X5用のバッテリー(左)は9.34Wh、Osmo 360のバッテリー(右)は7.55Wh

 なお、熱停止しなかった理由については、走行中は常に風が当たる状態だったこと、途中、真上に首都高がある荒川の中洲を走り、日陰に入る瞬間があったことも一因と考えている。念の為、無風かつ気温32度の直射日光下で改めて検証したところ、8K30fps/8K50fpsともに20分ほどで熱停止してしまった。夏の屋外では直射日光を避けるか、風が当たり続ける環境で使うしかなさそうだ。

 とはいえ、冷却ファンすらないデバイスにとって日本の夏は地獄みたいな環境なので、熱停止もやむなし……と考えるべきだろうか。運用でカバーするしか無い。

気温32度、無風かつ炎天下の場所で録画したところ、8K30fps/50fpsともに20分で録画が止まってしまった

 色味はコントラストが高く、カラッとしつつもビビッドすぎない塩梅だ。「Osmo Pocket 3」もそうだが、最近のDJI製品は万人受けするカラーを安定して出せていると思う。こだわらないなら撮って出しで十分なクオリティだ。もちろんLog撮影(D-Log M 10bit)もできるので、カラーグレーディングニーズにも応えられる。ただ、HDRが効きすぎているのか、被写体の輪郭を強調するような露出ムラが一部のカットで見られた事も付け加えておく。

 動画を書き出してみたが、あとから視点を変えられるというのは非常に便利だ。途中遭遇した巨大ジャンクションも、舐め回すようにカメラアングルを動かせる。また、2D映像への出力はフルHD〜2.7K辺りが一番美味しく感じた。360度カメラの8Kは、縦横4K(3840ピクセル)を2枚並べた2:1の映像(7680×3840ピクセル)で記録している。つまり、レンズの片面は4K映像。引きの画角なら4Kで書き出してもシャープだが、寄れば寄るほど映像は甘くなってしまう。

巨大構造物を舐め回すようなカットをあとから自在に生み出せるのはジャンクション好きにはたまらない(純正アプリ『DJI Mimo』内で編集)

 余談だが、Insta360のようなスティック形状と違って高さが抑えられているおかげか、自転車に装着した時のカメラの“振られ”が少なかったように思う。視点がハンドル側に寄ってしまうデメリットはあるものの、映像が安定する、カメラを固定するマウントへの負荷が少なくなるのは、ボックス型のメリットでもある。

 他にも「DJIエコシステム」ならではの機能もある。例えば、純正のワイヤレスマイク「DJI Mic 2」なら、レシーバー不要で2台までOsmo 360に直接接続できる。360度カメラは自撮り棒を伸ばして撮ることが多いので、内蔵マイクが遠ざかってしまいがち。Vlog用途など、喋りながら撮影したい時にワイヤレスマイクが手軽に使えるのはありがたい。

「Osmo 360」は「DJI Mic 2」と直接接続できる
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