「すごい明るい」「空って夜もちゃんと青いんだ」──8月19日の午後11時8分ごろ、西日本の広い範囲で火球が目撃された。夜空が一瞬、青空に見えるほど明るい“大火球”で、SNSでは驚きの声が相次いだ。なぜここまで明るかったのか。
火球は、いわゆる流れ星の中で、特に明るいものを指す。平塚市博物館で天文担当の学芸員を務める藤井大地さん(@dfuji1)によると、今回のような明るい大火球は「数年に一度」。2013年にロシア、チェリャビンスク州に隕石が落下した時には及ばないものの、「かなり明るかった」という。
「火球は、質量と速度のいずれかが大きいと明るくなります。今回、速度は21km/秒程度と一般的な流れ星(11k〜71km/秒)に比べると“ゆっくり”なほう。したがって隕石が大きかったと分かります」。
藤井さんは、長崎県の壱岐市と小値賀島(おぢかじま)に設置されているライブカメラの映像から、三角測量を応用して火球の軌跡を割り出した。これによると、火球は種子島の北東沖を流れ、高度18km程度で消失。隕石として宮崎県の南東の海に落下したもようだ。
「多くの場合は大気圏で燃え尽きますが、地上に落下するものは高度20kmあたりで光り終えます。今回は消失点高度が18km程度だったため、隕石として海上に落下したとみています」。
さらに、この隕石が火星と木星の間にある小惑星帯からやってきた小天体だった可能性を指摘する。火球の軌跡を宇宙に「遡る」と、太陽系をどのように移動し、どこからやってきたのか分かるのだという。
今回の火球は、午後11時過ぎという時間もあり、多くの人が目撃した。また各地のライブカメラやクルマのドライブレコーダーにも記録されるなど、多くの人が火球の様子を見ることができた珍しい事例となった。しかし藤井さんによると、今後はそうした機会が増える可能性もあるという。
というのも、近年はプラネタリーディフェンス(衝突する可能性のある天体から地球を守る活動)の観点から世界中の観測体制が充実しており、火球が出現するタイミングが予測できることもあるため。「予測から観測につながった事例はこれまでに11件あります」。
日本でも2024年9月に石垣島天文台が、予測に基づいて小惑星「2024 RW1(CAQTDL2)」に由来する火球の撮影に初めて成功した(プレスリリース)。今のところ、予測できるのは火球出現の「数時間前」といった状況だが、いずれは天気予報のように「火球予報」を見て観測に行くといったことができるようになるかもしれない。
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