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現代の“浮世絵“か 平版式の凸版印刷機だから表現できた「STICKER & DESIGN STORE」のステッカー分かりにくいけれど面白いモノたち(1/4 ページ)

» 2025年09月25日 16時45分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「STICKER & DESIGN STORE」は、東京は深川にある凸版印刷の会社、マエダ特殊印刷のステッカー専門ブランド。社内でデザインから印刷まで一括して行い、独自のステッカーを制作、販売しているのだけど、そのステッカーがなんとも独特なのだ。

マエダ特殊印刷のステッカー専門ブランド「STICKER & DESIGN STORE」のモノクロ凸版印刷のステッカーたち。公式オンラインストアから購入可能(Tシャツや一筆箋なども売ってます)

 いや、パッと見る分には、モチーフが多少特殊という他は、シンプルな単色、または数色だけ使われた普通にカッコいいステッカーなのだけど、よく見ると、その輪郭線のクッキリしたコントラストの高さや、線のシャープさ、緻密さに驚かされる。

こちらは、多色刷りなどのステッカー。上の写真とこの写真は、どちらも9月3日に「EXTRA PREVIEW ♯31」という雑貨の見本市に出展されていた「STICKER & DESIGN STORE」のブースで許可を得て撮影したもの

 実際、「EXTRA PREVIEW ♯31」という雑貨見本市のブースで初めて、このブランドのステッカーを見た時、最初はその「真蛸」とか「タラバガニ」とか「メガネモチノウオ」とか「アオリイカ」とかが博物画のような緻密さで描かれている、そのデザインに惹かれて足を止めたのだけど、よく見ると、どうやら印刷が普通のオフセットとかとは全然違っていた。で、聞いてみると、凸版の印刷所が立ち上げたステッカーのブランドなのだという。

 デザインは主にCHIYO TAKAIWAさん、印刷は主にTSUTOMU MAEDAさんが行っている二人だけのブランド。そして、この印刷会社は、TSUTOMU MAEDAさんのお父様が始められたという下町の老舗だった。しかも、凸版印刷専門。

 そういう印刷会社自体は、多くはないとはいえ珍しいというほどではないが、面白いのはこの会社、輪転式ではなく、平版式の印刷機を使っているとのことだった。この印刷機の写真は、公式インスタグラムなどで見ることができる。

 平版式の凸版印刷は、簡単にいえば木版画などと同じ、平たい板の凸部分に付けたインクを、紙などに押し当てて印刷するスタイル。現在、多くの凸版印刷は、昔の映画でよく見られた新聞が印刷されていくシーンのような輪転式が主流(とはいっても、凸版印刷そのものが減っているのだけど)。何といっても平版式は量産に向かないのだ。

購入したステッカーの一部。デザイン・ステッカーについては、多色刷り、一色刷りに関わらず、価格は1枚500円均一。蛸や烏賊、蟹などを博物図風のタッチと、独特なポージングに個性的はレイアウトでステッカーに仕立てている。右側の小さいステッカーはオマケ、上にあるのは凸版作成のためのデータや抜き型の形を掲載した「SPEC BOOK VOL.01」(800円)

 それを逆手に取ったというか、平版式の凸版印刷機だからこそ可能な表現でステッカーを作っているから、STICKER & DESIGN STOREの商品は面白いし、半分くらいアートの世界に足を踏み入れているのだ。白黒印刷の千社札くらいの大きさのステッカーが1枚500円というのは、高いと思う人もいるかもしれないけれど、これ「浮世絵」的な商品だと思えば全然安い。

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