次にAI関連政策だ。
高市内閣は産業振興と安全保障の両立がテーマであり、規制自体を強化する方向ではない、と理解している。
すなわちAIについても、リスクについて部分的な規制・ガイドラインの強化はあるものの、本質的には「イノベーションを阻害しない範囲で最低限の規制を整備する」という流れになる、と総理自身が明言している。とはいえ、これは過去3年間での方針と大差なく、基本的な流れは継続……と考えていい。AI基本法の中でチューニングは行われるだろうが、その枠組み自体が変わると考えるのは難しい。ただし、著作権侵害やディープフェイクの拡散は喫緊の課題だ。クリエイター保護やAI生成物であることの明示などを含めた法的な対策が示される可能性はある、と予測している。
規制強化の方針があるとすれば、対中国路線になるだろうか。
高市総理の安全保障に対する姿勢を考えると、「対中国」という路線では厳しさが増す可能性は高い。具体的には、政府機関などからの中国企業製AIや関連機器の排除を制度化する動きが出てくると予想している。場合によっては、AI開発への中国人技術者の関与を制限する、といった議論も出てくるだろう。
正直いろいろな副作用が考えられるため、単純な「中国排除」は慎重にしていただきたいとも思うが、安全保障とのバランス、という高市総理の政治姿勢を考えると、「対中国」で米国により近い姿勢になっていくのは避け難い。
関連する点として「データ保護」も注目される。
経済安全保障の観点から言えば、政府機関や重要なインフラ企業など扱うデータ、中でも機微なものについて国内サーバでの保管を義務付け、国外への無断持ち出しを禁じる「データ・ローカライゼーション策」の強化が打ち出されそうだ。
また高市総理は「能動的サイバー防御」にも積極的であり、推進する立場にある。当然そこでは、情報漏えいやそのルールに違反したときの罰則強化、といった、セキュリティ上の内部統制でも強固な立場を採る可能性が高い。導入議論が注目される「スパイ防止法」も、ここに連携してくる可能性は高い。
いわゆるビッグテック規制についても、おそらくは強化の方向に向かうだろう。
ただし、筆者が高市総理のこれまでの論調から感じるのは、ビジネス上の公正競争維持の観点よりも、偽情報・有害コンテンツ対策といった「社会通念上の責任」に対する言及だった。
特に以前から、高市氏は「偽情報の拡散は民主主義や安全保障にとって脅威である」という姿勢を示している。数年前に生成AIが話題になり始め、規制議論が出始めた頃にも、関係者の間では「日本は著作権議論が、欧米では偽情報による政治介入が危険視される傾向が強い」という話が出ていた。
その流れもあって、高市氏は以前より「偽情報に対する危機感」を強調する発言が多かったように思う。
ビジネスと安全保障のバランス、という彼女のポリシーを考えると、偽情報対策について、プラットフォーマーやAIサービサーに対して強い姿勢で臨む可能性は高い、と予測している。
筆者の予測としては「これまでの政策を引き継ぎつつもより国内重視」というところであり、それをベースにここまで検討してみた。
ただ、その上に大きな条件として関わってくるのが「この政権は長期的なものになるのか」ということだ。筆者は政治については専門的な知見を持ち合わせていないので、政権運営の長期性についてはコメントができない。しかし、どの領域についても1年でなにかが成せるわけでもない。特に、トランプ政権のような強権発動がありえないと考えると、変化は数年がかりで実現されるだろう。
石破政権からの継続性は薄くなりそうなので、この後高市政権がどこまで続き、また、その後継者がどんな傾向の人物になるかが重要ではある。最初の2年間でどこまで「高市色」の強い、保護主義的な路線になるか、注目しておく必要はありそうだ。
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