東京都立産業技術研究センターと北里大学の研究グループは12月2日、ニホンウナギの筋肉組織から“脂”をつくる細胞の作出に、世界で初めて成功したと発表した。人為的な遺伝子操作なしに、ほぼ無限に増殖を続ける「自然不死化細胞株」を作出できたといい、作出済みの筋芽細胞と組み合わせることで、本物に近い「細胞性ウナギ肉」の実現につながる技術だとしている。
研究グループは、稚魚の筋肉組織から取り出した細胞を長期間培養し、形態的特徴を手掛かりに分離・選別することで、3種類の新しい細胞株を作出。いずれも人為的な遺伝子操作を介することなく、120回以上の分裂を経ても増殖し続けた。
これらの細胞は、脂肪細胞に分化する前段階の「脂肪前駆細胞」だが、刺激によって成熟した脂肪細胞へと分化し、細胞内に多数の脂肪滴を蓄積。さらに脂肪酸の一種であるオレイン酸を加えることで、増殖を維持したまま効率的に脂肪を蓄積することを確認した。
蓄積された脂質の組成は、一価不飽和脂肪酸が最も多く、次いで飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸が続く構成で、市販の養殖ウナギの脂質組成とよく似ていた。
研究グループは、すでに筋肉を形成する細胞株を作出しており、今回の成果によって「細胞性ウナギ肉の実現に不可欠な要素がそろった」と説明。今後は、両細胞を組み合わせた立体的な組織の構築や、ウナギ特有の風味・食感を備えた「細胞性ウナギ肉」の開発に取り組むとしている。この他、抽出した脂の産業用途への応用も期待できるという。
将来的には、培養環境の整備により、「脂ののり具合の最適化」「品質の均一化」といった、“天然もの”では難しい特性の制御にも取り組む方針。これらは他の高級魚や絶滅危惧種の細胞性魚肉の開発にも応用可能だとしている。
論文は11月20日、英国「Nature」系列の国際学術誌「npj Science of Food」に掲載された。
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