ただ影響を考えると、スマホやゲーム機はPCほど「製品価格に大きく反映される」わけではないかもしれない。生産安定のためにPC以上に大量の調達計画を立てる場合が多く、そのサイクルも長めだ。また、1台あたりに利用するメモリの量も、昨今のハイエンドPCに比べると少ない。価格上昇の可能性は十分にあるが、PCほど劇的な上昇にはならないかもしれない。
特にゲーム機は、現時点でもハードウェア価格の高さが普及の足かせであり、アメリカでは関税の影響もある。簡単に値上げできる状況にはなく、慎重な姿勢が続きそうだ。地域による価格差が増える、もしくは維持される可能性は高いと予測する。
一部報道では、韓国SamsungがあえてHBMからDDR5やLPDDR5Xへと生産量を割り当て直すとも言われている。HBMの競争が激化し、むしろ品不足が見える通常メモリの方に分がある……という判断とみられる。そうした部分が価格上昇を和らげる方向に機能するかもしれない。
根本的な解決にはメモリ生産ラインの拡充が必要だ。だが、それには数千億円単位の投資と、年単位の時間が必要になる。
ここで懸念されるのは、AIデータセンターへの需要がいつまで続くのか、という点だ。
半導体メーカーの命は「生産ラインの効率的な運用」であり、できる限り在庫水準を低く抑えることが望ましい。今の需要が「AIバブル」だったとすると、この需要は短期的なものであり、生産ラインへの計画外の投資はリスクになる。一方で、AI需要がバブルではなく持続的なものになるなら、ライン増産は必要な投資になる。
問題の解決には、AIバブルの崩壊による需要の減少か、持続化に伴う新規投資が必要だ。現状のメモリ不足はこの判断がつきかねているから、ともいえる。メモリメーカーは投資をギリギリまで控えたいだろうが、どちらにしろ、遠からず決断が必要になるだろう。
ただ、仮にラインへの投資が決まったとしても、増産の効果が出るまでには数年かかってしまう。
だとすると、少なくとも26年は高値安定が続き、27年にもまだ解決できない可能性は高い。当面厳しい状況が続きそうだ。
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