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パンチの効いた第三者委員会報告書セレクション2025 今年の“ベスト他山の石”は

» 2025年12月26日 10時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 2025年もそろそろ終わり。今年も新商品からサイバー攻撃までさまざまなニュースがあり、ITmedia NEWSでも報じてきた。中にはもちろん企業の不祥事もある。記者という仕事柄、不祥事を取り上げるに当たっては、いわゆる第三者委員会報告書を読んで記事化することも少なくない。

 この第三者委員会報告書、実は読み物としても興味深い。不祥事の背景や原因を客観的に指摘する文書というのはなかなか痛烈で、財務や法制度に詳しくなくても分かる迫力がある。そこで本記事では、記者が今年読んだ第三者委員会報告書の中でも一読の価値があると思うものを3つほど紹介する。

 なお、第三者委員会報告書は往々にして長いので、全容を事細かに紹介はせず、特に印象的だった文言などをそれぞれピックアップしていく。全体感が気になる人は、是非元の文書を読んでみてほしい。

“AI・スタートアップ界隈”騒然 オルツの報告書

 2025年、印象的だった第三者委員会報告書を語るにおいて、オルツの一件は欠かせないだろう。2021年6月〜24年12月の間、売上高119億900万円、広告宣伝費115億5700万円、研究開発費13億1300万円を過大計上していたことが明らかになり、スタートアップ・AI業界に波乱を呼んだ。

 同社については弊誌を含め、すでにさまざまなメディアで分析や関係者の声が報じられており、事実関係については掘り下げが進んでいる状況にある。一方で原因分析──中でも経営トップに対するコメントなど、再読においても刺激的な箇所は多い。例えば「経営トップに求められる『誠実性』が欠如していたこと」という中見出しの痛烈さはなかなかのもの。時間がたって事態も進展しているいま、改めて読むとまた違う味がするかもしれない。

photo オルツの報告書から一部抜粋

役職員がハンマーでノートPC破壊 いわき信組の報告書

 個人的に最も強烈だった第三者委員会報告書は、旧経営陣が大口融資先の資金繰りを支援するため、不正な融資を行っていたいわき信用組合のものだった。

 「類例を見ないほど悪質」など全体を通して痛烈な物言いが見られる報告書だが、特に印象的なのは以下の記載だろう。無関係の身だが、これだけで胃が痛くなる。

 「過去に行ってきた法律にも抵触する不適切な行為を深く反省し、手口や履歴を含めて洗いざらい説明するという姿勢は全く見られず『代表者として承認しただけであり、詳細は分からない』『ほとんど覚えていない』『記録は処分してしまった』『私は知らない』といった、事実の解明に対して消極的・否定的な態度をとる役職員が多数を占めており、旧経営陣を含め、当組合から積極的に情報が提供されることはなかった」「第三者委員会の調査への対応としては、まれに見る特徴である」

photo いわき信組の報告書から一部抜粋

 また、役職員がハンマーでノートPCを破壊し、証拠隠滅を図った可能性に対して「これから調査が開始されるという段階で意図的に破壊・処分したということであれば、言語道断」としているのもなかなかスリリング。間違いなく必読の報告書といえるだろう。

一度も実施せず優待廃止 不動産テックREVOLUTIONの報告書

 もう一つ挙げるなら、不動産テック企業REVOLUTIONが「2000株を保有すれば半年ごとに6万円のQUOカードがもらえる」という破格の株主優待を発表したものの、一度も実施せず廃止したことを巡る報告書だろうか。

 SNSでは、優待の発表当時から株価の吊り上げが目的ではと指摘されていたが、報告書でも「何としても株価を維持・上昇させるとの短期的な視点から、株価刺激策として、検討開始からわずか1日程度で実施を決定したもので、著しく検討が不足しており、中長期的な企業成長との視点を欠いた場当たり的で拙速な経営判断であった」と断じられている。

photo REVOLUTIONの報告書から一部抜粋

 取締役への言及も痛烈。特にデザイン関連業務を専門とする取締役で監査等委員のm氏に対する見方は読むだけで背筋が冷えた。

 「デザイン関連業務を専門とするm氏は、専門外の事項については、自身の知見の乏しさ等を理由に、a氏(編集注:2024年11月21日当時の代表取締役社長)の提案の意義や適正性について十分に理解しないまま決議に応じたり、他2名の監査等委員の判断に委ねる側面が強かった。こういった側面は、例えば、2024年7月にWeCapital社の子会社化に関する説明を受けた際、ヤマワケエステート社の実質利回り等について指摘する一方、不動産投資関係については門外漢である自身としては、a氏の好きなようにすればよいと思う旨の意見を述べたり、本株主優待の導入についても、a氏とn氏(編集注:m氏と同じく取締役・監査等委員)のやりとりを傍観するのみで、株主が喜ぶのであれば良い話であると安易に考えて賛成したり、本新株予約権については、a氏から説明を受けたが、内容が理解できないまま、a氏の言う通りに賛成するなどしている点からも認められる」


 以上が筆者の選ぶ“今年の第三者委員会報告書”だ。どれか1つ選べと言われれば……他山の石にしたいという意味で、個人的にはいわき信組だろうか。ただし筆者はITビジネス媒体の記者のため、非IT系企業の報告書や、内容にIT関係の話題がないものはあまり読めていない。もしここで挙げた以外にも一読の価値がある報告書があれば、ぜひコメント欄などで共有してほしい。

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