26年のCESで一番話題になったといえば、韓国Hyundaiの基調講演で登場したBoston Dynamicsの「Atlas」だろう。華麗な身のこなしだけでなく、人間にはできない、でもロボットならできる“動きの効率化” という新機軸を人型ロボに持ち込んだ。腕も脚も前後の概念がなく、スムーズに物を運ぶことができる。
中国勢を含む他の人型ロボとの違いはこの“動きの効率化”だろう。今の二足歩行が急速に進化したのは、NVIDIAのomniverseなどを使った強化学習にある。デジタルツイン環境でロボットの動きを何万回とシミュレーションすることで、人の動きを模倣できるようになった。これまでの二足歩行が中腰ですり足をするように歩いていたのに対し、この手の機械学習を使ったロボットは、より人間に近い歩行を手に入れている。
ところが、Boston Dynamicsはさらに、ロボットならではの動きをプラスした。この思想は、油圧動作のAtlasから現行の電動モデルになった当初から見られたもので、工場など産業分野での導入を念頭に作られている。
実際のデモを見ても、他の二足歩行ロボとは一線を画していた。自動車工場を想定し、パーツを自律動作で運搬するデモを行っていたが、まず目に入ったのが身体のブレの少なさ。そしてマニピュレーターのふらつきの少なさだ。動きがカッチリしているおかげで、正確にかつ素早く物体の位置を測定して運搬することができるのだろう。ボディやマニピュレーターのふらつきが大きく位置決めがなかなか定まらない他の人型ロボと比べると全くの別物である。これだけ精密にボディを動かせるおかげか、190cmで90kgの巨体でもバックフリップを決められる。
このボディだからこそ動きの効率化も可能なのだろう。おそらく他のロボットと比べると、Atlasにかかるコストはかなり高価だと思われるが、「ちゃんと作り込めればここまでできる」を体現していたのが非常に印象的だ。
そして現在の親会社であるHyundaiはBoston Dynamicsの技術力を生かすショーケースとしてうまく機能している。これまで「技術はすごいが生かす場所がない」と、GoogleやSoftBankなどを転々としてきた同社だが、フィジカルAI時代が到来し、かつ製造業の中でもパーツが比較的大きくロボットに代替させやすい自動車メーカーというのも良いめぐり合わせだったと感じる。
人型ロボの最大のメリットは、人間が使っているインタフェースをそのまま使える点にある。主に人手不足の解消や危険な作業の代替として語られることが多いが、それだけでなく人には不可能な動きでさらなる効率化ができるのなら、人型ロボ普及の後押しにもなるだろう。問題はコストだが、ここは量産型のAtlasがどこまで魅力的な価格になるかに注目したい。
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