ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

X線天文衛星「XRISM」、ブラックホール周辺の“時空の歪み”を捉える 30年に及ぶ論争に終止符

» 2026年01月28日 16時05分 公開
[ITmedia]

 JAXA宇宙科学研究所は1月28日、X線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」の観測により、ブラックホール周辺に「広がったFe Kα輝線」が確かに存在すると発表した。アインシュタインが提唱した一般相対性理論における、強い重力による“時空の歪み”を捉えた。

ブラックホール周辺の想像図。左上はXRISMが搭載する高分解能分光装置「Resolve(リゾルブ)」が観測したMCG-6-30-15の巨大ブラックホールのスペクトル  Credit: CfA/Melissa Weiss (出典:JAXA)

 XRISMは、2024年2月に米NASAの集光型宇宙望遠鏡「NuSTAR」および欧州ESAのX線天文衛星「XMM-Newton」と共同で、地球から約1億2000万光年の距離にある活動銀河「MCG-6-30-15」の中心にある巨大ブラックホールを観測した。その結果、その周囲に形成された降着円盤に由来する“広がったFe Kα輝線”が確かに存在することを確認したという。

 ブラックホールは、強い重力によって周囲のガスを引き寄せて降着円盤を形成するが、この円盤を構成するガスに含まれる鉄原子は特徴的なFe Kα輝線を放射する。そして強い重力による一般相対論的効果によって、Fe Kα輝線は「非対称に大きく広がった形状」を示すとされていた。

 JAXAは、1993年に打ち上げたX線天文衛星「あすか」による観測で、広がったFe Kα輝線の検出を報告していたが、これまでの衛星は十分な分光能力を持たず、そのために「円盤から吹き出す風による吸収線などの影響で、鉄輝線が見かけ上、広がった形を示しているだけ」という可能性も指摘されていたという。

 しかし、XRISMが搭載する高分解能分光装置「Resolve(リゾルブ)」は、降着円盤の最内縁近くに由来するX線スペクトルを正確に抽出し、ブラックホールがもたらす一般相対論の効果を明確にした。今後の詳しいデータ解析により、ブラックホールの高速回転を示す証拠も得られると期待している。

 研究成果は、2025年12月17日付で米国天文学会が発行する学術誌「Astrophysical Journals」に掲載された(論文

X線望遠鏡やX線マイクロカロリメータ(Resolve)を搭載するXRISM(出典:JAXAのWebサイト)

 XRISMは、2023年9月にH-IIAロケット47号機で高度約550kmに打ち上げられたX線分光撮像衛星。日本では1970年代の「はくちょう」、80年代の「てんま」「ぎんが」、そして90年代の「あすか」などに続く、7番目のX線天文衛星となる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR