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平成“Web2.0”ノリは、令和では嫌われる? クックパッド「外部レシピ取り込み」炎上を考えるNEWS Weelky Top10

» 2026年03月30日 14時04分 公開
[岡田有花ITmedia]

 先週のアクセスランキングは、データセンターのリアルを描いた漫画が席巻しつつ、Mac Pro販売終了、OpenAIの動画生成AI「Sora」終了、クックパッドの新サービス炎上など、濃い話題が入った。

 中でも筆者が一番考えさせられたのは、10位のクックパッドの炎上だ。平成のWeb2.0ノリを令和に持ってきてしまった、 “タイムスリップ事故”のように感じたからだ。

新機能に「タダ乗り」批判

 今回炎上したのは、「レシピ取り込み」(レシピスクラップから名称変更)という新機能だ。

 Xや外部Webサイトなど、クックパッド外のレシピをインポートでき、クックパッド内のレシピとともに管理・横断検索できる機能だ。筆者も「いつかのインスタで見た鶏むね肉と大葉のやつ」などをすぐに見失うので、ユーザーには便利だろうなと思った。

画像 炎上した新機能「レシピ取り込み」(レシピスクラップから名称変更)

 だが、レシピ発信をビジネスにしている料理家を中心に批判が殺到。「コンテンツのタダ乗り」「アクセスが減ってビジネスに支障が出る」などと炎上し、レシピを発信していない一般ユーザーも、批判的な見方が大きくなった。

「無料でシェア」が当たり前だったWeb2.0時代

 ここでクックパッドの歴史を振り返ると、サービス開始は1998年。30年近く前だ。

 当時のWebでは、誰もが無料で情報を発信していた。「無料でも見てもらえるのがうれしい」という価値観があり、「情報をお金に換えよう」という意識は薄かった。

 クックパッドはその価値観の基に生まれた。ユーザーは手間暇かけたレシピを無償で投稿し、そのレシピが見知らぬ誰かに作ってもらえることや、「つくれぽ」が付くことを報酬と感じていた。そこに「搾取されている」という感覚はなかったはずだ。

レシピ発信は「善意」から「ビジネス」に

 その後、ネット広告市場や課金市場、EC市場が成長し、Webでのレシピ発信は大きなビジネスになっていった。

 クックパッド自身もビジネスとして成功し、09年に東証マザーズに上場。売上高は16年をピークに低迷しているものの、今も上場企業としてレシピをビジネスにしている。

 一方で、個人サイトやSNSでレシピを発信する料理家は、個々人でビジネス化を図っている。サイトに広告を入れたり、レシピ本を発売したり、YouTubeで企業の広告案件を展開したり……レシピ発信は「善意のシェア」ではなく「仕事」に変貌してきているのだ。

 そんな時代に、「クックパッド外のレシピを、クックパッドアプリに取り込めます」というサービスは、時代錯誤だったのだろう。ユーザーのレシピ閲覧がアプリ内で完結すると元サイトに飛ぶ必要がなくなり、料理家たちの収益源を奪うことにつながるからだ。

画像 クックパッドのサービス紹介より

 さらに、外部レシピのクリップは、一定数を超えると有料会員専用になる。クックパッドが自社サービスに他サイトのレシピを取り込み、それを自社の利益につなげる、という構造も、クックパッドが外部料理家のレシピを“横取り”する構図に見えた。

レシピの著作権は?

 レシピの著作権を問題にする反応もあったが、レシピの材料や手順には著作権が認められにくいとされている。クックパッドも、法的に問題がないと判断して新サービスをリリースしたのだろう。

 ただ今回の本質は合法か違法かではなく、時代の空気の変化だ。平成のWeb2.0時代は「みんなのもの」が美しかったが、令和は「誰が作ったか」「誰が得をしているか」が問われる。

 クックパッドの今回の機能は、2000年代前半の空気感のまま26年にリリースしてしまった、一種のタイムスリップ事故だと思う。

 昨今のAIを巡る炎上も、似た構造を感じる。便利な技術が誰かのコンテンツを吸い上げるとき、同意とリスペクトがなければ炎上する。料理が得意な人々がこぞってクックパッドにレシピを投稿し、「つくれぽ」だけで満足していたあの牧歌的な時代は、もう戻ってこないのだろう。

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