デル参入は、プリンタ市場の転機を暗示するのか?(1/2 ページ)

» 2004年06月11日 19時21分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 デルが先日、日本市場における新規事業を立ち上げた。プリンタ市場への参入である。

 ご存じの方も多いだろうが、デルは米国市場でダイレクトマーケティングの手法をPC以外の分野にも展開し、各分野で一定以上の成果を上げている。PCの周辺機器や消耗品の販売は数年前から行っており、プリンタでは当初、ヒューレット・パッカード、その後はレックスマーク製品を扱ってきた。こうした経験を積んだ上でのデルの参入、それもエプソンとキヤノン、リコーなどが強いブランド力を持つ日本市場への参入は、プリンタ市場(特にインクジェットプリンタ)の大きな転機を暗示しているように思えてならない。

顧客に直接リーチ可能なデルモデルのアドバンテージ

 本題に入る前に、デルモデルについて簡単に復習しておくことにしよう。

 同モデルの最大の特徴は、顧客と直接コミュニケーションを取る点にある。ダイレクト販売なら当たり前と言われそうだが、同社の場合、ポイントは、電話、インターネットなど顧客からの直接オーダー以外の販路を設けていない点にある。ソリューションパートナーがシステムを販売する場合も、ハードウェアの販売は直接デルが行う。

 同モデルには流通コスト削減、在庫圧縮などさまざまな面のメリットがあるが、中でも最も大きな利点は、顧客とベンダーが直接、信頼関係を構築できる点にあると僕は考えている。顧客は、すべてデルを窓口にしてサポートやシステム提案などのサービスを受けられる。その一方、デルは顧客から直接、製品に対する意見を聞く機会を持つことが可能だ。完全な顧客中心主義を貫くことができる。

 同様の手法を採ることは、リクツの上では既存のハードウェアベンダーにも可能だ。しかし、彼らの多くは既存の流通パートナーを通じたビジネスで利益の大半を上げている。そのため、流通パートナーとの関係を悪化させない程度の販売展開しか行えない。また、ダイレクトマーケティングは非常にシンプルな戦略でありながら、企業文化の面で既存企業にはその実行を阻害する要因があるとぼやくベンダーもいる。

 プリンタ市場はそんなデルモデルにピッタリ合う側面と、合わない側面の両方がある。

“消耗品付きコモディティ”にマッチするデルモデル

 プリンタ市場でデルが大きな存在になり得る理由は、コモディティ製品を安価かつ大量に顧客に展開するビジネスが、デルのビジネス手法にマッチしているからだ。顧客の要求するスペックや機能がある程度収れんし、ベンダー間の性能・機能差が少ない製品であればあるほど、デルの優位性は増していく。

 同じCPU、メモリ、ハードディスクなら、どのメーカーでも同じになってしまったPC製品でデルがトップに登りつめたのは、インテルが水平分業を強力に推し進め、どのベンダーの製品でも安定した性能と機能が得られるシステムを作り上げたためと言えよう。

 プリンタに関していえば、特にモノクロレーザープリンタで、性能や機能の面でのメーカー間格差が小さくなっている。もちろん、ランニングコスト、消費電力、メンテナンス性や速度、給排紙ユニットの便利さ、ドライバサポートなど、全く差がないわけではない。デスクトップPCほど各製品が平準化されているわけではないが、デルが参入したローエンドのモノクロレーザープリンタに限れば、デルモデルが優位性を発揮できる場面は多いと考えられる。

 しかも、プリンタにはPC業界にはなかった「消耗品」がある。消耗品を含めたトータルでビジネスの計画を練るプリンタ業界は、顧客との直接的な関係をベンダー自身が構築できるデルモデルにうってつけの分野だ。

 顧客は消耗品をデルが提供する顧客向けポータルページからオーダーするだけでいい。企業がワークグループで共有させているプリンタでは、その消耗品管理も業務として扱われ、その発注・納品も出入り業者が受け付けているだろうから、デルのアドバンテージは少ないかもしれない。しかし、彼らが狙っている個人やSOHOレベルのビジネス拠点の場合、Webサイトを通じ、ワン・トゥー・ワンで消耗品を注文できるデルは魅力的だろう。

 これはもちろん、インクジェットプリンタにも言えることだ。いや、インクジェットプリンタの方が、ビジネス的なチャンスは大きいかも知れない。店頭販売で売れるプリンタ消耗品は、トナーよりもインクの方が多いからだ。

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