デジタルライフの中心は「クラウド」へ――アップルが目指すデジタルハブ戦略の第2章:WWDC 2011基調講演リポート(4)(4/4 ページ)
WWDC 2011の基調講演で発表された内容のうち、これまで紹介した「OS X Lion」「iOS 5」に続いて、最も注目される「iCloud」について見ていく。プレゼンはジョブズCEO自身が行った。
音楽市場とクラウド市場のランドスケープを変えたアップル
ここでジョブズ氏が「実はOne more thingがあるんだ」と告げると、会場からは歓声が上がったが、「いやいや」と人差し指を左右に振り「小さな発表だ」と付け加えた。
そのOne more thingとは「iTunes Match」というサービスだ。iTunes in Cloudサービスによって、iTunesから購入した曲であれば、簡単に再ダウンロードができるようになるが、CDから取り込んだ曲を大量に持っているというユーザーもまだまだ多い。そこで、年間24.99ドルを支払うと、CDなどから購入した曲も自動的に曲認識して、iTunes in Cloudに対応してくれるようになる。このiTunes Matchで認識された曲は、256Kbps AACのDRMフリー形式でダウンロードされる。
アップルはすでに米国最大の音楽配信業者となっている。最近になってAmazonやGoogleも同様のサービスを発表しているが、これらは取り込み済みの音楽データすべてをインターネット経由でアップロードすることを求めており、データ転送だけでもかなりの時間がかかる。しかも、使いやすいアプリケーションが用意されているわけではなく、Webブラウザからの利用だ。さらに(利用料金が発表されていないGoogleは不明だが)、Amazonのサービスは、曲数によって値段が変わってしまい、割高になっていく。ジョブズ氏は「我々のサービスは業界で最も“お得”な内容になっている」と念を押す。
サービスを一通り紹介したところで、ジョブズ氏はこう切り出した。「もし我々が真剣ではないと思っているなら、あなたは間違っている」。そう断言して、ノースキャロライナ州メイデン市に建造している同社3つ目のデーターセンタの写真を披露した。人が豆粒ほどに見えてしまう巨大な施設でありながら、非常にエコフレンドリーな最新技術で建造されており、その中には最先端の高価なサーバ群がびっしりと詰まっている。
ジョブズ氏は、これらの施設を使ってiCloudサービスの提供を開始することが待ちきれない、と講演を締めくくった。
→WWDC 2011基調講演リポート(5)に続く
関連記事
- WWDC 2011基調講演リポート(3):「iOS」は繊細な軌道修正でさらなる発展を目指す
すでに一部の機能が紹介されていた「OS X Lion」と異なり、iPhone/iPod touch/iPad向けの「iOS 5」は、まったく情報がない状態からの発表となった。200の新機能から厳選して紹介された10の機能は、いずれも今後のiOS機器の方向性を予見させる充実した内容だ。 - WWDC 2011基調講演リポート(2):PCのあり方を再定義する「OS X Lion」
2時間超にわたるWWDC 2011基調講演のテーマは、「OS X Lion」「iOS 5」そして「iCloud」の3つだが、まずはフィル・シラー氏とクレイグ・フェデリギ氏が紹介したLionの内容について見ていこう。 - WWDC 2011基調講演リポート:クラウドを中心にしたデジタルハブ――ポストPC時代の幕開け
WWDC 2011で行われた基調講演の模様を林信行氏がリポート。「Mac OS X Lion」「iOS 5」そして「iCloud」。この3つのトピックから浮かび上がる次世代のデジタルハブ構想について考える。 - WWDC 2011:示されたのは「新たな飛躍」――Appleが実現するモバイル&クラウド時代の理想像
米国で6月6日に開催されたWorldwide Developer Conference 2011(WWDC 2011)の基調講演でAppleが明かした「OS X Lion」「iOS 5」「iCloud」は、2007年からAppleが起こしてきた革新の第2章だ。 - iOS 5は2011年秋リリース:iOS 5+iCloudで大きな変貌を遂げるiPad、iPhone、iPod touch
米Appleの開発者向けイベント「World Wide Developer Conference 2011(WDC2011)」が6月6日(現地時間)に開幕。スティーブ・ジョブズ氏も登壇した基調講演では、iOSの新たな展開が垣間見えた。 - Lion+5+Cloud=WWDC:アップル開発者会議、間もなく開幕!
WWDC 2011の会場に掲げられた巨大横断幕に「OS X Lion+iOS 5+iCloud=WWDC」の文字。ジョブズCEOがオープニングを飾る基調講演の内容を予想してみよう。 - 6月6日に開幕:ジョブズCEOの基調講演で幕を開けるWWDC2011――「Lion」「iOS5」「iCloud」を披露
Apple世界開発者会議(Worldwide Developers Conference 2011)では、次期Mac OS Xの「Lion」をはじめ、「iOS5」や「iCloud」が披露される予定だ。 - iOSとMac OSの未来をプレビュー:アップル、WWDC 2011を6月6日に開幕
iOSとMac OSの開発者に向けた「Worldwide Developers Conference 2011」が6月6日から6月10日までサンフランシスコで開催される。 - 林信行がおすすめする「iPad」プレゼン術
林信行が米国版iPadを1カ月間、日本版iPadを1週間ほど使って発見した「iPadの見せ方」「iPadの楽しみ方」を紹介していく。国内向けWi-Fi+3G版のインプレッションも。 - 「高級Netbook…だと…?」 iPadの活用法を考えてみる
iPadを使い始めて3週間ほどが経過し、いくつか気になる問題も出てきた。ここでは特に大きなポイントを2つ取り上げつつ、現状のiPadがどんなことに活用できるかも考えてみた。 - iPadと電子出版は“若者の読書離れ”を止められるか?
iPadリポート総集編の第2回では少し目先を変え、新しく出てきた電子書籍関連の話題を追っていく。iPadと電子出版の組み合わせはユーザーにとってどんな可能性を秘めているのだろうか。 - 「なんだ朝日新聞は読めないのか」――高齢者がiPadを使ったら?
iPadの特徴を挙げるなら、1つはその直感的な操作性だろう。そこで思いつくのが高齢者や子どもといったユーザー層の開拓だ。総集編前編では、ロードテストを兼ねて筆者の両親にiPadを試してもらった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.