LED照明の導入効果と注意点 第3回 「機器選定と導入」LED照明(2/2 ページ)

» 2012年04月20日 17時20分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]
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広い範囲を照らせるか

 JEL 801規格が定める性能要件は4つある。1つ目はランプ全体が放つ光の量。これはルーメン(lm)という単位で表す。JEL 801では、2,300lm以上でなければならないとしている。40形の直管形蛍光灯の値は2,600〜2,900lm。2,300lmは多少物足りないが、蛍光灯に近い性能は期待できる。

 2つ目は、ランプの光を拡散させること。表面全体から光を放ち、真下だけでなく、壁や天井など、横や上の方向も照らす蛍光灯と異なり、LED素子の光は1つの方向に直進する。何の工夫もせずに直管形ランプにLED素子を入れると、真下の狭い範囲しか照らさないものになる。

 JEL 801では、蛍光灯と同じように拡散する光を得るために、ランプ下方120゜の範囲に70%を超える光束を集中させてはならないということも規定している。30%以上の光束をランプの横や上に散らさなければならないということだ。この規定を満たすものなら、壁や天井も照らすので、蛍光灯と比べて光が拡散する様子は変わらないように見える。

色の見え方は変わらないか? ちらつかないか?

 3つ目の条件は、色の見え方だ。これは、一般にRa(平均演色評価数)という単位で表す。数値が大きいほど、色を正確に見せる光であるということになる。現在普及している三波長発光形蛍光灯のRa値は80〜90。JEL 801では、Ra値は80以上でなければならないとしている。これなら照明を入れ替えても、色の見え方が大きく変わるということはないだろう。

 4つ目の条件はランプに流す電流波形の形だ。リップル率が1.3を超えてはならないとしている。リップル率とは、直流電圧の「波」の大きさを表す。値が大きいほど、波が大きいということを意味する。波が大きいと、LEDランプがちらつく。

 一般的な蛍光灯は、交流電流の2倍に当たる100Hzあるいは120Hz程度(1秒間に100回あるいは120回)で細かく点滅している。これくらいの速さなら、人間の目ではちらつきを感知できない。

 直管形LED照明が登場し始めたころは、リップル率が高いままの電流をLED素子に流している製品があり、ちらつく照明の下で働いていた人が目に疲れや気分の悪さを訴えるというトラブルもあった。リップル率は1.3以下という基準は、このようなトラブルを防ぐためのものだ。

 以上に挙げた基準は、G13口金の製品を選ぶときも参考になるだろう。特に、ちらつきの問題は人の健康に影響するので、細心の注意を払うべきだ。

 JEL 801規格準拠品はいろいろな意味で使いやすいが、導入コストが高くなるという欠点がある。口金の形も給電方式も蛍光灯のものと異なるため、既存の照明器具の流用は不可能。専用の照明器具に入れ替えなければならないのだ。

 JEL 801規格は、2010年10月に定まったもので、NECライティング、シャープ、東芝ライテック、パナソニックなどの国内メーカーが製品化しているが、まだ規格策定から2年もたっていない。

 今後参入メーカーが増えて競争が激しくなれば、JEL 801規格準拠品の価格も下落し、購入しやすくなるだろう。G13口金の製品を扱っているメーカーも参入する動きを見せている。アイリスオーヤマは、すでにJEL 801規格品の販売を始めており、大塚商会も発売を検討しているという。

天井照明を最低限に抑える方法も

 先に説明したとおり、JEL 801規格は「蛍光灯と見え方が変わらない光を発する」ことを目的にしている。単純に考えれば、蛍光灯からJEL 801規格準拠の照明に入れ替えれば、光の強さや見え方はほとんど変わらない。天井の照明だけでオフィス全体を明るく照らせる。

 しかし、電力消費量を下げるために天井照明を最低限に抑える「タスク・アンビエント照明」という考え方もある(図4)。天井照明を暗くし、作業する机上は、タスク照明(照明スタンド)で明るく照らすという考え方だ。

task ambient 図4 タスク・アンビエント照明の考え方。左側は従来の考え方、部屋全体を明るくするので、無駄が多い。右側のように、天井照明を暗くして、作業するところはタスク照明を使うようにすれば、無駄に明るいという部分が少なくなり、消費電力量が減る。

 JIS Z91110が定める「事務所の照度基準」によると、パソコンのキーボードを操作する事務所では、照度は750ルクス(lx)以上でなければならないとある。

 ルクスは机上面など、面の明るさを示す尺度だ。天井照明だけでキーボードを操作する机上の照度を750lx以上に保つには、かなり高いところから強い光を放射することになる。オフィス全体が明るく見えるので見栄えは良いが、机上だけでなく、通路なども同じように照らすため、効率が良いとはいいにくい。

 タスク・アンビエント照明の考え方を取り入れると、天井照明は机上を300lx程度で照らす程度に暗くし、作業する机上ではタスク照明を利用して750lx以上の明るさで照らすということになる。

 LEDを利用したタスク照明は広く普及しており、安価に入手できる。ごく近いところから光を照らして机上の照度が750lxになるようにすればよいので、弱い光でも机上は十分明るくなる。消費電力5〜6W程度の製品でも間に合うくらいだ。

 タスク照明を利用し、作業が終了したら消灯する、必要な場所でのみ点灯するという習慣を意識付けるようにすれば、消費電力量のさらなる削減も期待できる。タスク照明の器具は、安いものなら5,000円程度で手に入る。天井照明との組み合わせによっては、初期導入コストを抑えられる可能性もある。

まずは一部に導入して様子を見る

 先にもちらつきによって気分の悪さを訴える人が出たというトラブルについて説明した。現在流通している製品で、人の気分を悪くさせるほどちらつく製品はほとんどないとみられるが、光の見え方、色の見え方に違和感を受ける人が出る可能性もある。

 わずかなトラブルでも防ぐため、各メーカーはLED照明を導入するときはオフィスの1部屋など、一部に試験的に導入して様子を見ることを勧めている。照明を変えれば、違和感を感じる人もいれば、感じない人もいる。違和感を感じていても慣れてしまう人もいるだろう。問題が発生しても、狭い範囲での試験運用なら、異なる種類の機器に変えるなどの対応も簡単だ。

 試験運用で問題がないと確認できたら、1部屋ごと、あるいは1フロアごとという具合に段階を踏んで導入していくと良いだろう。

点灯/消灯できる範囲を狭く、細かく

 オフィスの広い執務室では、複数のスイッチを用意して天井照明を点灯/消灯できるブロックを分割していることが多い。もしも、広さの割には少ないスイッチで点灯/消灯操作をしているとか、スイッチ1つだけで済ませているとしたら、施工前に、点灯/消灯できる範囲を狭く、細かくすることをお勧めしたい。

 狭い範囲で点灯/消灯ができるようになれば、本当に必要なところだけ点灯し、不要なところは消灯するという運用が可能になる。LED照明は消費電力量が少ないといっても、不要な部分をこまめに消灯するようにしていけば、消費電力量をさらに下げることができる。

 第4回の「運用」編では、導入後に少しでも電力消費量を減らすための運用方法と、それを自動化する機器、さらにLEDならではの特性を生かした各メーカーの先進的な取り組みを紹介する。

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