昨夏に東京電力と東北電力の管内で設定された節電目標15%をBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を駆使してクリアした企業がある。ボウリングなどのレジャー施設を展開するラウンドワンだ。今夏は西日本の店舗にもBEMSを拡大して15%の節電に取り組む。
関東と東北で電力不足が取りざたされた昨年夏のこと、電気の無駄遣いとしてやり玉に挙げられたのが娯楽産業である。危機感を募らせた各社は節電対策に乗り出し、電力使用量の削減に取り組んだ。その1社がラウンドワンである(図1)。対象地域の主要店舗にBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入して、節電目標の15%を上回る電力使用量の削減と、同時に電気料金の低減に成功した。
ラウンドワンはボウリングをはじめとする屋内の複合型レジャー施設を全国の109か所で展開しており、施設内の機械や空調・照明などに使う電力の量は非常に多い(図2)。東京電力の管内にある25店舗だけで1万kW以上の電力を使用する。
2010年の7月〜9月の電力使用量のピークは1万2915kWだったが、BEMSを導入した2011年は1万380kWに抑えることができた。目標の15%を上回る19.6%の削減である。東北の6店舗では20.9%の削減を実現した。
この実績を生かして、今年は西日本の店舗にもBEMSを導入して、7月1日から15%の節電に取り組んでいる。全国111店舗のうち、テナント契約やガス空調を使用している店舗を除く87か所にBEMSの導入を完了した。BEMSには空調機器の保守と合わせてダイキン工業の「D-BIPS」を採用した。
ラウンドワンで節電を担当するのは、社長直轄組織の「コスト管理室」である。各店舗の運営効率を高めることが役割の部門で、電力会社との契約も一手に担う。コスト管理室ではBEMSで集計した全店舗の電力使用状況を常に把握することができる。
店舗に設置したBEMSのコントローラで収集した電力使用量のデータは、インターネット経由でダイキン工業の遠隔監視センターに送られて集計・分析される。その情報を本部のコスト管理室にあるパソコンで見ながら、必要に応じて各店舗に指示を送る仕組みだ(図3)。
特に空調を対象にした電力のピーク抑制は、きめ細かく実施する。各店舗の30分ごとの電力使用量をもとに、目標値を超えそうな状況になると、あらかじめ設定した優先順位に従って、5段階で空調を自動的に制御する。例えば廊下などの共用部にある空調は来店客への影響が小さいことから、制御対象の優先順位を高くして、空調能力を40%に落とし、次に設定温度を2度高くする、といったように段階的に制御することが可能になっている。
空調以外の節電対策も追加した。というのもラウンドワンで使用する電力のうち、空調が占める割合は45%程度で、この電力だけを減らして節電目標の15%を実現するのは現実的ではないからだ。そこで追加の対策として、照明をLEDに切り替えたり部分的に間引いたりしたほか、エスカレータの間引き運転も実施した。
こうしたBEMSと各種の節電対策を組み合わせた結果、電力のピークを15%以上削減することが可能になったわけだ。月間の使用量も東京電力管内の25店舗の合計で7月と8月の2か月間に20%以上を削減でき、約4000万円の電気料金を低減する効果があった。今年は全国の87店舗で同様の節電対策を実行すれば、全体のコスト削減効果は格段に大きくなる。
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