企業向け電気料金を2割近く値上げ、関西電力が4月から改定へ電力供給サービス

関西電力は2013年4月から実施する電気料金の改定案を経済産業省に申請した。認可が必要な家庭向けは平均11.88%の値上げ率だが、自由化されている企業向けは19.23%の大幅な単価の引き上げを見込んでいる。ただし東京電力の料金改定時と同様に審査で縮小される可能性が大きい。

» 2012年11月27日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 関西電力の改定案では、企業向けの「特別高圧」(契約電力2000kW以上)の単価が1kWhあたり2.68円、「高圧」(同50kW以上)の単価が2.72円の値上げになる。現行の単価は特別高圧で10円前後、高圧で11円〜12円程度の契約プランが多く、2割以上も上昇する。基本料金は据え置かれるが(図1)、料金全体で見ても平均して19.23%の大幅な値上げ率である。

図1 電気料金の計算方法。関西電力は東京電力と同様に電力量料金の単価だけを値上げ。出典:東京電力

 すでに9月から値上げを実施した東京電力は特別高圧・高圧ともに2.36円の値上げ幅で、関西電力の改定案はこれを上回っている。とはいえ東京電力は4月に2.61円だった値上げ幅を9月から引き下げており、関西電力も値上げ幅を縮小することになるのは確実だろう。

値上げ率が最も高いのは「低圧」

 店舗などの契約が多い「低圧」(契約電力50kW未満)の単価は、さらに大きな値上げ幅になっている。7月〜9月の夏季料金が12.41円から15.98円に、その他の月の料金が11.33円から14.53円に、1kWhあたり3円以上も上昇する。小規模な利用者ほどインパクトが大きくなる改定案になっており、この点も審査の過程で縮小を求められる可能性が大きい。

 電気料金の値上げに関しては、新電力などによって自由化が図られている特別高圧・高圧は認可を受ける必要がなく、自由化されていない低圧や家庭向けの「電灯」と呼ばれる契約プランだけが認可を必要とする。認可対象の中では家庭向けの「従量電灯A」の値上げ率は標準的なケースで8.80%と低く抑えられている(図2)。

図2 関西電力が料金の改定を申請した「電灯」と「低圧」の標準的なケースにおける値上げ額。出典:関西電力

原子力発電所の再稼働を前提にした原価

 今回の値上げ案で注意しなくてはならないのは、関西電力が原子力発電所の稼働を現在の2基から4基に増やすことを前提にしている点だ。大飯発電所の2基に加えて、再稼働が未定の高浜発電所の2基も織り込んで原価を算定している。それでも5年前の2008年度と比べて燃料費が4000億円以上も増えるため(図3)、そのほかの原価を抑制しても電気料金の値上げが必要になる、というのが関西電力の説明である。

図3 関西電力が算定した原価。2013年度〜2015年度の想定値を2008年度と比較。出典:関西電力

 具体的に燃料費の内訳を見ると、2013年度〜2015年度の3年間に供給する電力量の23%を原子力でカバーする想定になっている(図4)。もし原子力発電所を1基も稼働できない状況になって火力発電を増加させると、約3000億円の燃料費が追加で必要になる。

図4 関西電力が想定する燃料費の内訳。出典:関西電力

 このような発電比率の変更が必要になった場合に、いったん認可を受けた電気料金に関しては燃料費の増加だけを根拠に再度値上げを申請することが11月16日から可能になった。経済産業省が電気事業法の料金算定規則などを改正する省令を施行したことによるものだ。関西電力が値上げを申請する10日前というタイミングであり、政府と電力会社の連携プレイと考えざるを得ない。

 すでに認可を受けている東京電力でも2013年度から原子力発電所の再稼働を織り込んでいるほか、今後追随する九州電力なども同様の値上げ申請案を提出することは確実である。電気料金の大幅な値上げを材料に原子力発電所の再稼働を迫る電力会社の姿勢が明らかなだけに、審査を担当する「電気料金審査専門委員会」の見識が問われるところだ。

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