蓄電池:用途と必要な機能を見極め、蓄電容量当たりの価格を評価節電に効くシステム(2)(2/2 ページ)

» 2013年01月16日 09時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]
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太陽光パネルからの直流電力をそのまま充電する製品も

 価格だけを見るとソニーの製品はかなり高い。その分、機能も充実している。蓄電容量が異なるだけの2製品「ESSP-3002/10」と「ESSP-3001/10」は、停電時に電力を途切らせずに電気機器に供給する機能のほか、ピークカット・モード、ピークシフト・モードという節電に役立つ機能を備えている。つまり、最初に紹介した製品のようにオフィスにおいて複数の従業員で使いながらピークカットなどができるのだ。

 ピークカット・モードでは、消費電力量が設定値を超えそうになったときに蓄電池の電力を放出することで、設定値を超えないようにするモードだ。ピークシフト・モードは単価が安い夜間電力で充電し、昼間は一定の割合の電力を蓄電池から供給するというモードだ。これらの機能の設定や状態確認は、パソコンなどのWebブラウザでできるようになっている。

 「ESSP-3003/14P」と「ESSP-3002/14P」は、上記の機能に加えて太陽光発電パネルからの電力を直流のまま充電する機能も備えている(図4)。一般的な蓄電池は太陽光発電システムのパワーコンディショナーが出力する交流の電力を受けて、内部で直流に変換して充電する。放電するときは交流に変換して放電する。直流⇔交流変換を繰り返すたびに電力を損失してしまうが、太陽光発電パネルからの直流電力をそのまま充電できれば、変換の回数を2回減らせ、有効に電力を利用できる。

図4 ソニーの「ESSP-3003/14P」、「ESSP-3002/14P」。太陽光発電パネルからの直流電力をそのまま充電できる

 ソニーの4製品の蓄電容量1kWh当たりの価格を比較すると、最も安いのは太陽光発電パネルからの電力を直流のまま充電する「ESSP-3003/14P」。1kWh当たり74万円ほどになる。

住宅向け製品は独自の機能と1kWh当たりの価格で選ぶ

 住宅向け製品(図5)を選ぶときは、非常時にどれくらいの電力が必要かをまず考えよう。例えば、蓄電容量が最も大きい京セラの「EGS-LM144A」は、480Wの電力を連続で24時間供給できる。一方、蓄電容量が4.65kWhと最も小さいパナソニックの「LJP155K」の場合、500W程度の電力を7〜8時間分供給できるという。

図5 住宅向け製品の仕様一覧。※ 三井ホームが販売する同等品の価格

 もちろん停電時に長く電力を供給してくれる製品は便利だ。しかし、日本の電力事情を思い出してほしい。半日も停電が続くということがどれくらいあるだろうか? よほどの大災害がない限り、そこまで長い時間電力供給が止まるということはない。半日も電力供給が止まっていたとしたら、そこから避難した方がよいということになる。

 そう考えると、図5に示した製品の蓄電容量はすべて必要十分と言える。住宅用蓄電池では蓄電容量よりも最大出力、そしてそれぞれの製品の特長を見るべきだろう。図5に示した製品の中では、京セラ、東芝ライテック、ニチコン、パナソニックが太陽光発電パネルとの連携機能を備えている。パナソニックは太陽光発電パネルからの電力を直流のまま充電する機能も持っている。

 付属のリモコンを使うことで、太陽光発電パネルからの電力と蓄電池の電力の割り振りを設定できる。発電した電力をなるべく売電するようにしたり、昼に発電した電力を蓄電池に充電し、夜に消費するようにするなど、さまざまな設定が可能だ。太陽光発電システムの設置まで考えている人なら、これらの製品の購入を考えてみるべきだろう。

 NECの蓄電池はインターネットに接続する機能を備えており、NECがデータセンターから蓄電池の状態を監視し、異常発生時に素早く対応できる体制を作っている。東芝ライテックの蓄電池は、契約電力を超えそうになったらコントローラの「アシスト」ボタンを押すことで蓄電池からの電力供給を開始し、契約電力を超えることを避けることができる(図6)。

図6 東芝ライテックの蓄電池は、ボタンを押すことで蓄電池からの電力供給を始めることができる。電力を使いすぎていると感じたときに押すと、電力会社からの受電量を最小限に留めることができる。出典:東芝ライテック

 最後に蓄電容量1kWh当たりの価格を比較してみよう。最も安いのは東芝ライテックの製品で、22万7000円程度だ。次に安いのはNECの製品。1kWh当たり27万1000円前後になる。他の製品はすべて30万円を超える。

 以上のことを考えると、太陽光発電システムを設置する予定がないという人には東芝ライテックの製品がお薦めだ。最大出力が3000Wと大きく、1kWh当たりの価格が安いところが魅力的だ。

 太陽光発電システムとの連携を考えている人には、京セラ、ニチコン、パナソニックの製品を検討してみると良いだろう。

超大型製品と超小型製品

 最後に蓄電容量も最大出力も両極端な2製品を紹介しよう(図7)。どちらもパナソニックの製品だ。

図7 補助金対象の中でも最も大規模な製品と小規模な製品

 1つ目は「LJ-ME15A」。蓄電容量は15kWhに達し、最大出力は10000Wにもなる大型の製品だ。この製品は体育館などの避難所や、ある程度の大きさのビルで使うことを想定している。その分価格も高く、808万5000円となっている。パナソニックの住宅用蓄電池と同じように、太陽光発電パネルからの電力を直流のまま充電する機能を備えている。

 もう1つは「VBBA216LB」だ。蓄電容量はわずか1.6kWhで、最大出力は150W。その分、販売価格はかなり安い。パナソニックによると、太陽光発電システムの電力を少しでも有効に使おうという人のための製品だという。蓄電容量も最大出力も小さいので、携帯電話の充電器や、ラジオなど消費電力が小さい電気機器しか使えないが(合計120Wの電力を6時間程度供給)、割り切ってしまえばこれで十分という考え方もある。

 今回紹介した製品を購入すると、機器の価格の1/3の補助を得られる。補助金の上限は個人の場合は100万円で、法人の場合は1億円。価格を見て「どれも高いなぁ」と思った人は多いかもしれないが、1/3の補助が出ると考えればかなり見方が変わってくるのではないだろうか。いざというときの備えのため、そしてピークカットやピークシフトのためにそろそろ蓄電池の購入を考えてみてはいかがだろうか?

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