和歌山県は日本最大の紀伊半島の南西部に広がり、温暖な気候と豊富な海洋資源に恵まれている。海に面して大規模な火力発電所があり、その発電量は県内の電力使用量を上回る。一方で再生可能エネルギーの導入は遅れていたが、いよいよ風力や太陽光による発電所が増えてきた。
関西電力が長年にわたって原子力発電に注力してきた影響なのか、近畿の各県は他の地域に比べて再生可能エネルギーの導入量が低い傾向にある。温暖な気候で知られる和歌山県も例外ではなく、全国で43番目にとどまっている(図1)。
和歌山県内に原子力発電所はないが、大規模な火力発電所がいくつか稼働していて、県全体の発電量は使用量を上回るほどである。中でも紀伊半島西側の臨海地帯にある関西電力の海南発電所と御坊発電所の2か所が主力だ。2つを合わせると発電能力は390万kWにのぼり、関西電力が保有する火力発電設備の約4分の1を占める。
このうち海南発電所(図2)では日本で初めての試みとして、火力発電の際に発生する蒸気を近くのリゾート施設に送って冷暖房に利用できる設備を導入した。一種のコージェネレーションシステムと言える。
さらに和歌山市にも天然ガスを使った370万kWの発電所を建設する計画が進行中だ。完成すれば西日本で最大の火力発電所になる。これで原子力発電所が稼働しなくても関西地域に十分な電力を供給できるだろう。
それに比べると再生可能エネルギーは発電能力が大きく見劣りする。とはいえ地球温暖化防止の観点から、和歌山県でも再生可能エネルギーの導入に取り組むことが求められている。最も期待が大きいのは風力発電である。
和歌山県の最南端には台風で有名な潮岬(しおのみさき)がある。風力発電には最適な場所のように思えるが、意外なことに周辺には風力発電所が見あたらない。風速が不安定なことが障壁になるようだ。その代わりに日照時間の長さを生かしてメガソーラーの建設プロジェクトが進んでいる。
むしろ風力発電所に向いているのは、火力発電所が集まる紀伊半島西側の海岸に近い地域だ(図3)。人口わずか8000人弱の広川町には大規模な風力発電所が2か所で稼働していて、両方を合わせると46MW(4万6000kW)の発電能力になる。
そのうちの1つは大阪ガスグループが双日と共同で2008年に建設した「広川明神風力発電所」(図4)である。16基の風車を使って16MWの発電能力を発揮することができ、年間の発電量は4100万kWhになる。
およそ1万1000世帯分の電力使用量に相当する規模で、広川町の需要を大きく上回る。もう1つの30MWの風力発電所を加えれば、近隣の地域を含めて十分な供給量がある。
風力に加えて太陽光発電も徐々に広がってきた。和歌山県で初めてのメガソーラーが2012年9月から運転を開始したほか、県の所有地など複数の場所でメガソーラーの建設計画が決まっている。
さらに県内の過疎地を対象に、100kW程度の「ミニソーラー」を設置して地域の振興につなげるプロジェクトが2013年に入って始まった。大阪ガスグループが事業主体になり、発電した電力を売って得られる収益の一部を地域に還元する。
まず山間部の紀美野町にミニソーラーの第1号を建設することが決まり、2013年7月から発電を開始する予定だ。同様の事業モデルを他の市町村にも展開して、太陽光発電で過疎地を明るく照らしていく計画である。
2014年版(30)和歌山:「黒潮が流れるエネルギーの宝庫、海流発電とメタンハイドレートも 」
2013年版(30)和歌山:「本州の最南部にある未開の地で、巨大なメガソーラーが次々に姿を現す」
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