日本は石油、天然ガス、石炭など、エネルギー資源のほどんどを輸入に頼っている。そんな日本にも純国産の資源がある。しかもその資源量は世界でも第3位に入るほどの量だ。これから開発が進めば、化石燃料ばかり消費している日本の発電所の姿を大きく変える可能性を秘めている。それが「地熱発電」だ。
火山が噴火すると、高温の溶岩が火口から流れ出す。溶岩は地下深くにあるマグマが噴き出してきたものだ。地熱発電はまだ地上に噴出していないマグマだまりの熱エネルギーを利用した発電方法だ。
地下を深く掘っていくと、高温の水が高圧の水蒸気とともに噴き出す場所がある。地熱発電ではこの水蒸気を取り出してタービンを回して発電する。
地熱発電の基本的な仕組みを図1に示した。マグマだまりに隣接し、高温になった蒸気と水を汲み上げ、「気水分離器」で水蒸気と熱水を分離する。その結果得られた熱水は「還元井」という井戸を通して地中に戻す。こうすると、戻した熱水をふたたびマグマだまりが熱してくれる可能性がある。
気水分離器で分離した水蒸気は蒸気溜に一時蓄積し、タービンに送ってタービンを回し、発電機を作動させる。タービンを回した蒸気は復水器に回り、冷やされて液体の水になる。
このように地中から取り出した水蒸気のみを分離して発電に利用する方式を「シングルフラッシュ方式」と呼ぶ。九州電力の大岳発電所、大霧発電所、山川発電所などがこの方式で稼働している。
地下から得られた水蒸気だけでなく、熱水も利用する方式もある。ただし、この方法は得られる熱水の温度が高くないと利用できない。水蒸気と熱水を分離した後、熱水をタンクに移動させ、圧力を下げて水蒸気にして、タービンを回転させる力として利用する方式だ。この方式を「ダブルフラッシュ方式」と呼び、日本最大の地熱発電所である八丁原発電所はこの方式を採用している。ダブルフラッシュ方式を利用すると、建築に追加の費用が発生するが、出力は15〜25%上がるという。
ダブルフラッシュ方式のおおまかな仕組みを表したのが図2だ。蒸気と熱水を気水分離器まで引き上げた後、蒸気をタービンに回すところはシングルフラッシュ方式と変わらない。気水分離器から還元井を通して地中に熱水を戻す部分の間に「フラッシャー」という部分がある。ここで熱水をためて圧力を下げて蒸気を作り、タービンに送るところがシングルフラッシュ方式と異なる。
地熱発電は、発電時に地球環境に悪影響を与えるガス類をほとんど発生させない上、地熱がたまっている部分を掘り当てれば半永久的に利用できる。燃料もいらない。火山国である日本に適した発電方法だ。しかし現状をみると、世界第3位とされる地熱の資源量のうち、利用している分はわずか数%。
温泉への影響を心配する声や、地熱を利用できる場所の一部が国立公園であるという障害は確かにある。さらに、地熱発電の開発には膨大な資金がかかり、調査の結果商業運転ができないとなれば、投資はすべて無駄になる。すべてが無駄になる可能性がある事業に投資する人はいないだろう。
今後、地熱発電を普及させるには本格的な工事の前に事業として運営できる可能性を手軽に知ることができる仕組み、あるいは技術が必要だろう。政府が調査費を援助したとしても、事業リスクが高いことに変わりはない。調査技術の進歩、あるいは調査データを持ち寄って一括で公開するなどの工夫が必要なのではないだろうか。
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