鉄道システム全体で電力使用量5%削減、回生電力を列車間で融通エネルギー管理

最新の電車や自動車ではブレーキ時に発電する「回生電力」を利用できるものが増えている。三菱電機は複数の列車が作り出す回生電力をネットワークで融通し合う技術を開発した。全体の電力使用量を最大5%削減できる。蓄電池などと組み合わせることも可能で、2014年度の事業化を目指す。

» 2013年02月20日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 回生電力は動力源になるモーターなどを使って、ブレーキをかけた時に発電するもので、最近では電車や自動車、エレベータでも採用されるようになった。発電した電力を内部で使うことによって、電力使用量を削減できるメリットがある。ただし列車の場合は発電量が多く、余剰分の大半を熱として廃棄しているのが現状だ。

 三菱電機が開発した「列車回生電力融通技術(TRECS)」は、複数の列車間で回生電力を融通できるようにして、余剰電力を有効に活用する。そのために情報通信ネットワークと電力ネットワークを組み合わせて、鉄道システム全体の電圧や電流を制御する点が特徴である。

 各列車に搭載しているTIMS(車両情報統合管理装置)が走行位置や電力需給などの情報をネットワーク経由で送ると、TRECSは全体の状況を分析して、関連する変電所の電圧を制御することによって列車間で電力を融通し合えるようにする(図1)。

図1 回生電力を列車間で融通する仕組み。出典:三菱電機

 従来は変電所の電圧を高めにして固定で維持する必要があり、回生電力が架線を流れると電圧が高くなりすぎる問題があった。このため電力の大半を使うことができずに、熱として廃棄していた。

 TRECSを導入すると、首都圏の過密な路線を想定したシミュレーションでは、廃棄していた電力を最大80%まで利用できるようになる。この結果、鉄道システム全体の電力使用量を最大5%削減できる。さらにTRECSは蓄電池を使った電力貯蔵システムや駅舎の電源装置と組み合わせることができ、列車間で使いきれない電力をいっさい廃棄しないで活用することも可能になる。

 一般の鉄道は専用の変電所から大量の電力を受けており、電力使用量の削減を求められている。5%の削減率でも効果は大きい。三菱電機はTRECSを2014年度に事業化することを目指して、鉄道会社に採用を働きかけていく。

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