東京電力の競争入札に初名乗り、神戸製鋼所が140万kWの火力発電所電力供給サービス

2月15日から東京電力が募集を開始した火力発電の競争入札に対して、鉄鋼大手の神戸製鋼所が参加を表明した。落札できることを前提に、発電能力140万kWの大規模な火力発電所を栃木県に建設する計画だ。2019年〜2021年の稼働を目指して、3月中に環境評価を開始する。

» 2013年02月25日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 東京電力は長期的に発電コストを低減するため、2019年〜2021年に供給を開始する260万kW分の電力を他の事業者から購入することを決めている。実施に向けて2月15日から競争入札の募集を開始したところ、22日に神戸製鋼所が一番乗りで参加する意向を表明した。

図1 真岡製造所。出典:神戸製鋼所

 神戸製鋼所はアルミニウム製品の主力工場である栃木県の真岡製造所(図1)に隣接する土地に、都市ガスを燃料にした火力発電所を建設する計画だ。発電効率が高いガス・タービン・コンバインド・サイクル(GTCC)方式の設備を導入して、電力会社の大規模な火力発電所に匹敵する140万kWの電力供給を可能にする。

 GTCCはガスを燃焼させた熱でタービンを回して発電した後、燃焼時に発生する蒸気を使って別のタービンを回して発電する2段階の方式をとる(図2)。少ない燃料で多くの電力を作ることができるため、最近の火力発電設備に数多く採用されている。

図2 ガス・タービン・コンバインド・サイクル(GTCC)方式の発電設備。出典:神戸製鋼所

 東京電力が入札を予定している260万kWのうち、神戸製鋼所が真岡市に建設する火力発電所は半分強を供給できる規模になる。ただし入札条件のひとつとして、電力1kWhあたりの上限価格が9.53円に設定されていることから、条件を満たせるのは燃料費が安い石炭に限られるとの見方がある。

 現在の電力会社による発電コストを見ると、1kWhあたり石炭は5円、ガスは10円、石油は15円程度かかるのが標準的だ。ところが最近は米国でシェールガスが大量に採取できるようになり、ガスの価格低下が見込まれている。神戸製鋼所もガスの価格低下とGTCCのさらなる効率向上を想定して入札に加わることにしたものとみられる。

 火力発電所を建設するためには、事前に環境評価を実施して政府の認可を受ける必要がある。神戸製鋼所は3月中に環境評価の手続きを済ませて、2015年度までに評価を完了する見込みだ。東京電力の入札条件である2019年6月〜2021年6月の間に供給を開始できるようにする。供給期間は原則15年間である。

 入札は5月24日に締め切られて、7月下旬に落札者を決める予定になっている。東京電力は価格の安い事業者から選定して、合計の電力が260万〜300万kWの範囲に収まるところで確定させる。神戸製鋼所のほかに入札する事業者が出てくるのか、落札価格はいくらになるのか、結果が注目される。

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