石炭に生きるギリシャ、高性能発電システムを日立が供給電力供給サービス

国の電力政策を見直し、改善していくには再生可能エネルギーや原子力だけに着目していてはだめだ。伝統的な火力発電の改善も進めなければならない。

» 2013年04月15日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 ギリシャは金融危機の文脈で語られることが多い。一方、同国のエネルギー危機が話題になることは少ない。なぜか。石炭大国だからだ。

 2010年時点のギリシャの石炭産出量は6489万トン。これは世界最大の石炭輸入国日本の輸入量の2分の1近い。ギリシャの発電量は2009年時点で614億kWhであり、このうち86.6%を火力が占めている。火力のほとんどが石炭だ。

 このように発電用の燃料を自給できるギリシャにも悩みがある。産出する石炭の品位が低いことだ。水分が多く、燃焼時の発熱量が比較的少ない亜炭と褐炭が生産量の大半を占めている。つまり、火力発電の効率が低くなりがちなうえ、CO2排出量が多くなってしまう。

 ギリシャはEU加盟国だ。従って、EUの「20-20-20」政策、つまり、2020年に温室効果ガスの排出量を1990年比で20%減とし、再生可能エネルギーの割合を20%に高め、エネルギー効率向上によりエネルギー消費量を20%削減する取り組みに協力しなければならない。幸い、ギリシャは風力発電と太陽光発電の潜在能力が共に高い。2020年時点の風力発電能力は7500MW、太陽光は2200MWだと予想されている。

 しかし、現在発電の9割近くを担っている石炭火力発電の改善も必要だ。実際に、新型石炭火力発電所の導入が進み始めている。

 同国の消費電力の70%以上を発電するPublic Powerは、褐炭生産から発電、送電までを手掛ける国営電力会社だ。発電設備の総容量は13000MWに達する。2013年4月、日立製作所と日立パワー・ヨーロッパは、Ptolemis(プトレマイス)*1)火力発電所に新設する5号機向けの石炭火力発電設備一式を、Public Powerの主契約者であるギリシャTERNAから受注した。

*1) Ptolemisは、ギリシャの首都アテネから北西に500km程度離れた石炭採掘と石炭産業を中心とした小都市。紀元前6000年の考古学遺物が出土する都市でもある。

 5号機の出力は660MW。ギリシャで最大規模かつ最新鋭の火力発電設備になるという。石炭火力発電設備のうち、蒸気タービン発電機と周辺装置を日立製作所が納入する。ボイラー設備と周辺機器、環境装置は日立パワー・ヨーロッパが担当する。

 ボイラーでは、褐炭焚超臨界圧石炭火力技術を採用。亜臨界圧技術と比較して5%程度CO2排出量を削減できる。

 5号機は2015年に着工、2019年に運転開始の予定だ。20-20-20政策のタイムリミットには間に合う。

テーマ別記事一覧

 電力供給サービス 


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.