工場には無駄な廃熱が多い、低温でも150kWの発電が可能自然エネルギー

省エネ、省電力はあらゆる工場で取り組まれている重要課題だ。次は効率的な熱利用が必要だ。従来、そのまま捨てていた低温廃熱を利用したい。電力コストの引き下げにつながるからだ。

» 2013年04月19日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 火力発電では、発電に使った燃料が持っていたエネルギーを100%電力に変えることはできない。約半分しか電力に変わらない。

 熱をムダに捨てているのは工場も同じだ。省エネルギーセンターが調査した「工場群の排熱実態調査」は、調査年が2000年度といくぶん古いが、排熱の利用状況がよく分かる。100℃から500℃までの低温排熱のうち、300℃未満の低温排熱の利用率が特に低く、年間20万Tカロリーもの熱がそのまま大気中に捨てられている。業種別では化学、鉄鋼、機械、清掃(工場)、紙パルプに廃熱が多い。

 経済産業省によれば、国内の未利用熱エネルギーの合計は年間1兆kWhに達するのだという。これは年間総発電量と同水準のエネルギーが無駄になっていることを意味する。

 このようなムダがなぜ起こるのか。1つは原理的な問題だ。熱エネルギーを全て電気エネルギーに変換することはそもそもできない。さらに、150℃未満の熱は9割以上がそもそも回収困難だといわれている。これは企業の意識が低いためではない、回収技術が未発達だからだ。

 日立造船は、300℃程度の廃熱を効率良く電力に変換する装置「ORC中温廃熱回収発電プラント」の実証プラントを三井物産プラントシステムと協力して建設する(図1)。愛知製鋼の協力を得て、同社の知多工場において、2013年10月から実験を開始する。

図1 排熱回収プラントの外観。出典:日立造船

 日立造船の技術は、一般にバイナリー発電と呼ばれている技術に相当する。水蒸気を利用せず、有機溶媒であるシリコーンオイルを利用して熱を回収するため、総合効率*1)は80%以上になるという。

 2000kW以下の規模の発電に適する技術であり、愛知製鋼の現場では約150kWの発電を計画している。プラント自体は数m角と小さく、水蒸気を利用する技術と比べて装置の費用を抑えることが可能であるため、さまざまな工場に適用できるという。

*1) 総合効率=(蒸気を発電、または温水として利用したエネルギー)/(廃熱源から回収したエネルギー)

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