原子力に依存し続ける東京電力、再度の値上げが必至法制度・規制

北海道・関西・四国・九州の4電力会社が原子力発電所の適合性審査を一斉に申請した。各社は電気料金の値上げにあたり、原子力発電所の再稼働を織り込んで燃料費の抑制を計画している。同様の見通しを立てていた東京電力だけは再稼働が難航して、事業計画の大幅な修正が必要な状況だ。

» 2013年07月08日 15時37分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 7月8日に「原子力規制委員会設置法」が施行されたことを受けて、原子力発電所の再稼働を急ぐ電力会社が一斉に適合性審査を委員会に申請した。北海道・関西・四国・九州の4電力会社を合わせて、対象の原子力発電設備は10基にのぼる。さらに九州電力は7月12日にも追加で2基の申請書を提出する予定だ(図1)。

図1 原子力発電所の再稼働計画と審査申請状況

 この4社に東北電力と東京電力を加えた合計6社が2012年度以降に電気料金の値上げを申請したが、いずれも原子力発電所の再稼働を見込んで燃料費を抑制する計画になっている。東北電力を除くと2013年度から原子力発電所を再稼働させる想定で、予定通りに再稼働できなければ電気料金の再値上げを実施しなければならない状況にある。

 新しい適合性審査の対象になる12基が稼働すると、多少の遅れはあるものの、各電力会社の収支計画に大きな影響は生じないと考えられる。問題は東京電力だ。2012年5月に電気料金の値上げを申請した時点では、柏崎刈羽原子力発電所の7基のうち6基を再稼働させる計画だった。このうち4基は2013年度中の稼働を見込んでいたものの、現在のところほぼ不可能な状況にある。

 そうなると、2013年度に原子力発電で想定していた279億kWhの電力の大半を火力発電で補わなくてはならない(図2)。火力と原子力の燃料費の差によって、単純計算では2667億円の費用が増えることになる。予定した6基が稼働しないと、2014年度には4187億円の燃料費が増加する見通しだ。

図2 東京電力の2012〜2014年度の燃料費の計画(2012年5月の値上げ申請時点)。出典:東京電力

 もともと東京電力は6基の原子力発電所を再稼働させても、以前と比べて燃料費が年間に5000億円以上も増えることから、2012年度に電気料金の値上げに踏み切った。このまま原子力発電所を再稼働できなければ、2013年度と2014年度に合計7000億円近い燃料費の上積みが必要になり、電気料金の再値上げが現実的になってしまう。

 原子力発電に依存している限り、事業の先行きは不透明な状態が続く。ほかの電力会社も同様の問題を抱えていることに変わりはない。再稼働に向けた動きを加速させるだけで済ませずに、低コストの火力発電設備を増強するなどの対策が急務である。もろもろの費用を含めると、原子力発電が火力発電よりも高コストであることは明らかになっている。

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