原子力発電所の再稼働が取りざたされる新潟県だが、県内には豊富な再生可能エネルギーがあり、近海には天然ガスが眠っている。信濃川などの水資源を生かした小水力発電は全国で第3位の規模を誇る。廃棄物を活用したバイオマス発電や、降雪に耐えられるメガソーラーも着実に増えてきた。
新潟県では電力会社のほかに自治体が数多くの発電所を運営している(図1)。大半は水力発電所だが、雪国のハンデを克服しながら太陽光発電所の規模を拡大中だ。市町村ではバイオマス発電の取り組みも活発に始まっている。
隣接する長野県や富山県と同様に、県内を流れる河川の水資源は豊富にある。天候によっては洪水の危険があり、ダムによる治水対策は欠かせない。このダムの水量を活用した水力発電は限りなく自然エネルギーに近いものである。
新潟県の企業局が運営する水力発電所は12カ所あり、その中で規模が最も大きい代表格は「奥三面(おくみおもて)発電所」である。上流にあるダムから690メートルの長さの導管を使って、毎秒40立方メートルにのぼる大量の水を受けて発電する(図2)。
導管を流れる水の落差は102メートルに及ぶ。水量が最大の時には34.5MW(メガワット)、水量を減らした状態でも8.4MWの発電が可能だ。年間の発電量は1億2000万kWhに達し、一般家庭で3万5000世帯分の電力を供給することができる。
ダムの水流を活用した発電所は最近でも開発が進んでいる。最も新しいのは2011年3月に運転を開始した「広神(ひろかみ)発電所」で、ダムの直下に建てられた(図3)。40メートルの落差がある水流を生かして1.6MWの発電能力がある。このほかにも県内の別の河川では、同様のダム直下式で2.6MWの水力発電所が2018年の完成を目指して建設中である。
再生可能エネルギーの導入量では小水力発電が圧倒的に多いが、バイオマス発電も全国で第2位の規模がある(図4)。木質バイオマスを中心に石炭を補助燃料に使った「糸魚川バイオマス発電所」が2005年から稼働している。国内のバイオマス発電所では最大規模の50MWの発電能力がある。
さらに2013年4月には長岡市の環境衛生センターで、生ごみを発酵・分解してバイオガスを発生させる設備が運転を開始した(図5)。バイオガスを燃料にして年間に410万kWhの電力を作ることができる。1日に処理する生ごみの量は55トンにのぼり、自治体が運営するバイオガスによる発電設備では全国で最大の規模になる。
生ごみをガス化することによって、燃やすごみの量が3分の2に減る。設備の建設費は全体で約45億円かかっているが、ごみ焼却量の削減による施設の統廃合や発電した電力による経費削減などから、15年程度で投資を回収できる見込みだ。
先進的な取り組みは太陽光発電の分野でも見られる。降雪量が多い新潟県では積雪対策が必要になる。その好例が「新潟東部太陽光発電所」である。新潟県の企業局が産業団地の中に設置したメガソーラーで、2011年10月から1号系列、2012年7月から2号系列が、それぞれ1MWの発電規模で運転を開始した。
このうち2号系列では太陽光パネルを地面から1.8メートルの高さにして雪に埋もれないようにしたうえで、パネル面に雪が積もらないように角度を30度に傾けている(図6)。その結果、初年度の発電量が想定を26%も上回って、年間に142万kWhを記録した。
発電効率を計算すると16.2%に達する。太陽光発電では12%程度が標準とされていて、それをはるかに上回り、年間の売電収入は約6000万円になった。建設費が4億円だったことを考えると、運転維持費などを含めても10年以内に回収できる状況だ。
新潟県は同じ産業団地の中に新たに3号系列の建設を決めて、2015年度中に運転を開始する計画である。発電規模は1・2号系列よりもはるかに大きい15MWで、2号系列と同様のパネル設置方法を採用する。年間の発電量は2000万kWhを見込み、一般家庭で6000世帯に相当する規模になる予定だ。
冬の11月〜2月の発電量は低くなるものの、春から秋にかけて十分な日射量があれば、全国平均を上回る発電量が期待できる(図7)。雪国でもメガソーラー事業が成り立つことを示した点で、新潟東部太陽光発電所の成功は大きな意味がある。
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2015年版(17)新潟:「洋上風力と潮流発電に日本海で挑む、内陸には雪と太陽光と水力発電」
2014年版(17)新潟:「雪に負けず増え続けるメガソーラー、日本海の風力や波力も有望」
2012年版(17)新潟:「バイオマス発電で全国トップ、太陽・地熱・海洋エネルギーにも着手」
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