石油精製の廃棄物でも発電できる、10万kW級の設備を製油所に導入スマートファクトリ

石油業界で最大手のJX日鉱日石エネルギーが新たな電力事業を開始する。茨城県の鹿島製油所に10万kW級の火力発電設備を導入して、電力の小売事業を拡大する計画だ。発電用の燃料には、石油精製のプロセスで発生する廃棄物を活用する。

» 2013年08月30日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 鹿島製油所。出典:JX日鉱日石エネルギー

 JX日鉱日石エネルギーは茨城県の鹿島製油所に大規模な火力発電設備を導入する(図1)。グループ会社が運営する「鹿島北共同発電所」の休止中の発電設備を取得・改造して、2015年度中に運転を開始する計画である。取得する設備の発電能力は16万5000kWあり、改造後も10万kW級の能力を発揮できる見込みだ。

 この発電設備の特徴は、石油の精製時に生じる廃棄物を燃料に活用する点にある。アスファルトなどの「重質油留分」から軽油などの石油製品を作るために「軽質油留分」を抽出する装置がある。「溶剤脱れき装置(SDA)」と呼ぶもので、軽質油留分を抽出する際に超重質な「SDAピッチ」が残留する。通常は廃棄物になるが、これを燃料にして発電することが可能だ(図2)。ただし発電用のボイラーをSDAピッチ向けに改造する必要がある。

図2 発電設備を改造した後のプロセスと生成物。出典:JX日鉱日石エネルギー

 JX日鉱日石エネルギーは2009年に岡山県の水島製油所にSDAを導入して、SDAピッチを火力発電用の燃料として他社に供給している実績がある(図3)。通常の石油を燃料に使った火力発電と比べてコストが安く済み、資源を余すことなく活用できる。鹿島製油所ではSDAの導入と合わせて自社で発電設備を保有して、電力事業を拡大することにした。

 最近になって電力会社が相次いで電気料金を値上げした影響で、企業向けの電力小売市場が急速に広がってきた。JX日鉱日石エネルギーは2003年に新電力として小売事業に参入したが、供給力の強化が大きな課題になっている。鹿島をはじめ全国11カ所にある製油所・製造所などを活用して、再生可能エネルギーを含む発電設備の増強を進めていく。

図3 水島製油所の「溶剤脱れき装置(SDA)」。出典:JX日鉱日石エネルギー

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