「ゲゲゲのふるさと」を利用、鳥取で小水力発電所が完成自然エネルギー

小水力発電はそれまで使っていなかった水の位置エネルギーを利用する優れた発電方式だ。鳥取県が主導した出力260kWの小水力発電所も、発電用途ではないダムの水を使いつつ、本来のダムの用途を損なわれないものだ。

» 2013年09月06日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 鳥取県南部町と水力発電所の位置

 とっとり県民債「ゲゲゲのふるさと」で調達した資金などを使った小型の水力発電所「賀祥(かしょう)発電所」(鳥取県南部町、出力260kW)が、2013年9月に運転を開始した(図1、図2)。

 鳥取県企業局は工業用水道事業や埋立事業と合わせて再生可能エネルギーを生産する電気事業を進めている。8つの水力発電所(3万7400kW)の他、風力発電所(3000kW)と太陽光発電所(200kW)を各1カ所運転中だ*1)。2012年に募集したとっとり県民債の発行総額10億円のうち、1億円を再生可能エネルギー発電所の建設に利用。今回の賀祥発電所にも5000万円を投じている。

*1) この他、倉庫の屋根を利用したFAZ倉庫太陽光発電所(出力500kW、2013年10月運転開始予定)と浄水場の敷地を利用した企業局東部事務所太陽光発電所(出力120kW、2014年2月運転開始予定)を建設中だ。

 「賀祥発電所の総事業費は3億2000万円、県民債の他、公営企業債を発行することで資金を調達した。ダム関連の土地を利用したため、土地関連の出費はない」(鳥取県企業局)。土木や建物、発電機、電気工事などをそれぞれ担当する6社に建設を発注し、2012年6月に建設を開始している。今後は企業局が賀祥発電所を所有し、運営する。

図2 賀祥発電所。出典:鳥取県

発電用ではないダムを利用

 賀祥発電所では1989年に完成した高さ46.4mの県営多目的ダム「賀祥ダム」の水を使う(図3)。同ダムは鳥取県西部を流れる日野川水系の法勝寺川をせき止めたもの。洪水調整や農業用水、上水道用水を確保するためのダムであり、本来は発電用のダムではない。今回は賀祥ダムの維持放流水(利水放流水)を利用することで発電する。発電所が利用する水の有効落差は37.5m、最大使用水量は0.9m3/秒。横軸フランシス水車を採用した。

図3 賀祥ダムと賀祥発電所の位置関係。出典:鳥取県

 年間発電量140万kWh(1400MWh)を目標としており、固定価格買取制度(FIT)を利用して全量中国電力に売電する。「売電額として年間4060万円(税別)を見込む。売電収入は公債の償還や県民債の利払いなどに充てる」(鳥取県企業局)。

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