スマートメーターの導入を急ぐ政府、仕様を統一しない電力会社エネルギー管理

政府の「スマートメーター制度検討会」が6カ月ぶりに開催されて、電力会社ごとの導入状況や今後の課題が明らかになった。企業向けの高圧部門では2016年度までに設置を完了する予定だが、通信方式を統一できていない問題のほか、新たに仕様見直しの必要性が浮上してきた。

» 2013年09月13日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電力システム改革を推進するためのインフラとして、政府は「2020年代の早期に全世帯・全工場にスマートメーターを導入する」ことを目標に掲げている。電力を使用する約8000万の企業や家庭でスマートメーターによる自動検針が可能になり、30分単位の電力使用量に合わせた柔軟な料金設定などを実現する狙いである。

 9月11日に6カ月ぶりに開催した「スマートメーター制度検討会」で最新の導入状況が報告された。それによると、契約電力が500kW以上の特別高圧・高圧大口の利用者に対しては、8割で設置が完了して自動検針を実施済みである(図1)。一方で電力使用量の少ない高圧小口や低圧の利用者には2%しか設置されていないのが現状だ。

図1 スマートメーターの導入状況。出典:資源エネルギー庁

 電力会社別に見ると、東北・東京・北陸・九州の4地域で高圧部門の設置が完了している。残る6地域は3年後の2016年度に完了する予定だが、現状で2%にしか設置できていない高圧小口の約70万の利用者すべてにスマートメーターが行きわたるかどうかは不確実である(図2)。

図2 電力会社別の導入状況。出典:資源エネルギー庁

 家庭を中心に利用者の大半を占める低圧部門の導入は関西で本格的に始まっていて、東京が2014年度の上期から、東北と四国が下期から本格導入を開始する。沖縄を除く9地域で導入が完了するのは10〜13年後の2023〜26年で、政府の目標である「2020年代の早期」からは遅れる状況にある。この導入完了時期を前倒しする対策が新たな課題になっている。

図3 スマートメーターの仕様と調達方法。出典:資源エネルギー庁

 もうひとつの課題として明らかになったのが仕様の不統一である。関西電力と九州電力が先行して導入を進めた結果、スマートメーター本体の仕様が2種類に分かれることが確実なことに加えて、スマートメーターとネットワークの通信方式が各電力会社でバラバラに決められている(図3)。

 おそらくスマートメーター本体の仕様は東日本(中部・北陸を含む)と西日本で別々になる。そうなると調達コストに影響するほか、東西間を連携したサービスなどに支障をきたす可能性が大きい。

 通信方式の不統一も同様にコストとサービスの両面で利用者に不利益がもたされる。電力会社をコントロールできない経済産業省の力不足が招いた事態である。

 仕様に関しては新たな課題も浮上してきた。現在までに各電力会社が高圧の利用者向けに設置したスマートメーターではデジタルデータを提供できない仕様になっている。

 企業で導入が進んでいるBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を有効に活用するためにはデジタルデータが不可欠なことから、スマートメーターの仕様の見直しを2013年度末までに実施することになった(図4)。

図4 高圧用スマートメーターの仕様見直し案。出典:資源エネルギー庁

 スマートメーターが情報通信機器であることを認識していれば、こうした仕様不統一の問題は避けることができたはずである。制度検討会のメンバーには情報通信分野の専門家が少なく、経済産業省の担当部署(資源エネルギー庁の電力・ガス事業部)の知識や経験にも疑問符を付けざるを得ない。推進体制の強化も重要な課題と言える。

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