スマートメーターをオープンな仕様に、東京電力が方針転換エネルギー管理

東京電力は2018年までに関東の1700万戸にスマートメーターを設置する計画だが、その仕様が閉鎖的であるとの指摘を受けていた。改めて標準規格に準拠したオープンな仕様に変更する方針を打ち出し、通信プロトコルにはインターネットで使われているTCP/IPを実装することを表明した。

» 2012年07月13日 07時30分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 政府による電力需給の安定化に向けたアクションプランの目玉のひとつがスマートメーターの普及である。今後5年以内に全国の利用者の8割にスマートメーターを導入する目標を掲げており、それに従って各地域の電力会社は設置計画を推進し始めたところだ。

図1 東京電力が設置するスマートメーターのイメージ 図1 東京電力が設置するスマートメーター(一体型)のイメージ。出典:東京電力

 中でも利用者が多い東京電力は2018年度までに1700万台、2023年度までに2700万台のスマートメーターを設置して全利用者への導入を完了する計画である(図1)。ところがスマートメーターの仕様を独自の規格で策定したことにより、各方面から批判の声が上がっていた。

 スマートメーターは日本の電力事業を変革するインパクトをもつだけに、電力会社を中心にさまざまな思惑が交錯して、必ずしも適切な形で導入計画が進められてこなかった。最も問題視されたのは、スマートメーターの仕様を電力会社が独自の規格で策定した点である。それによって、従来から取引関係のある少数のメーカーが製造を一手に引き受ける構造を維持しようとした。

 当然ながらメーターの製造コストが高くなることに加えて、スマートメーターをつなぐネットワークが閉鎖的になるため、提供できるサービスも電力会社によってコントロールされることになる。こうした批判を受けて、東京電力は3月からスマートメーターの仕様に関する意見を広く募り、それをもとに改めてオープンな仕様を策定する方針を発表した。

 スマートメーターと電力ネットワークをつなぐ通信プロトコルには、インターネットで標準的に使われているTCP/IP(トランスミッション・コントロール・プロトコル/インターネット・プロトコル)を採用することで、電力会社以外の事業者が提供するサービスとも連携できるようにする(図2)。

図2 オープンな通信ネットワークを生かしたサービスの拡大 図2 オープンな通信ネットワークを生かしたサービスの拡大。出典:東京電力
図3 スマートメーターによる電力使用データの自動収集 図3 スマートメーターによる電力使用量データの自動収集。出典:東京電力

 スマートメーターは従来の電力メーターに取って代わるもので、毎日の電力使用量をネットワークを通じて電力会社のメーター・データ管理システム(MDMS)に送信する役割を果たす(図3)。東京電力が導入するスマートメーターは30分ごとに電力使用量のデータをMDMSに送る仕様になる見込みだ。

 これまでのように検針員が個々の利用者を訪問してメーターの数値を毎月確認する必要がなくなり、電力会社にとっては大幅なコスト削減を実現する手段になる。

 と同時に、30分単位の電力使用量に応じたサービスを提供できるようになることも大きなメリットだ。特に電力需要がピークに達した時に使用量を抑制する「デマンドレスポンス」のような節電対策を大規模に展開することが可能になる(図4)。

図4 HEMSとの連携によるデマンドレスポンス 図4 HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)との連携によるデマンドレスポンス(DR)。出典:東京電力

 今回の方針転換によって、東京電力が導入するスマートメーターの仕様が当初案よりも国際標準などに準拠したオープンなものになることは確実である。ただし現時点では大枠の方針が発表されただけで、詳細な仕様は公表されていない。

 10月以降にスマートメーターの詳細な仕様を開示して、その後に通信ネットワークの要件を確定することになっている。新しい仕様に基づくスマートメーターは2014年度から導入を開始する計画で、2013年内に入札を実施する予定だ。

 東京電力の説明資料の中には、「東京電力の従来仕様に優位性が認められる場合は、その従来仕様をオープンにする」といった表現も残っており、どこまで標準的な仕様が盛り込まれるかは不透明なままである。10月以降に発表する詳細仕様の内容によっては、東京電力が再び修正案を求められる可能性もある。

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