夏を前にして、ピーク時の需要逼迫を心配する声があちこちから聞こえるようになった。政府は供給量以上の需要が発生することを防ぐために、BEMSアグリゲータ制度などさまざまな策を打っている。同じように需要逼迫時の需要抑制に効果を発揮するのが「デマンドレスポンス」だ。
デマンドレスポンスとは、電力供給量が逼迫した時や、系統が不安定になった時、つまり電力会社が電力を供給しにくくなったタイミングに合わせて、需要家(企業や家庭など電気を利用しているところ)が電力の使用を抑制するように仕向けることを指す。つまり、需要家に節電させる気を起こさせるシステムということだ。
デマンドレスポンスの手法としては、「電気料金ベース」と「インセンティブベース」がある。電気料金ベースのデマンドレスポンスの例としては、電力会社が電力を供給しにくい状況に陥る時間帯(例えば夏の暑い日の昼間)の電気料金単価を高く設定する時間帯別料金が挙げられる。
夏の昼間の電気料金を高く設定すれば、多くの需要家は余計な出費を抑えたいという心理から節電に励むと予想できる。反対に、余計に使ってしまうと痛い目に遭うことになる。電気料金ベースのデマンドレスポンスは、ムチを使って消費電力量を抑えるものと言える。
時間帯別料金の考え方をさらに押し進めたのが「ダイナミックプライシング」だ。これは、翌日の天候や電力需要予測値などのデータから、翌日の時間帯別電気料金単価を決定する方式である。同じ夏の昼間でも、特に暑い日の電気料金単価は高くなり、涼しい日は電気料金単価が安くなる。
インセンティブベースのデマンドレスポンスとは、電力会社からの節電要請に応じて需要家が節電したら、何らかの形で報酬を受け取れるというものだ。報酬としては現金やクーポン券を使う例が多い。電気料金の割引をもって報酬とすることもある。インセンティブベースのデマンドレスポンスは、いわばアメを利用して消費電力量を抑制する取り組みと言える。
インセンティブを渡す方式としては、主に2種類ある。1つ目は、電力会社からの要請に応じて需要家が節電する、あるいは受電を止めるという契約を結び、需要家の行動次第で電力会社がインセンティブを渡す方式。
もう1つは節電で浮く電力を供給量と見立てて、市場で取引する方法だ。この場合、節電で浮く電力、つまり市場に売りに出す電力を「ネガワット」と呼び、市場での取引を「ネガワット取引」と呼ぶ。
日本ではエネットが法人向けデマンドレスポンスサービス「EnneSmart(エネスマート)」を提供している。基本は電気料金ベースのデマンドレスポンスだが、需給逼迫時に節電に協力した需要家にインセンティブを渡す手法も組み合わせている。
関西電力はネガワット市場を作り、需要家が売りに出したネガワットを関西電力自身が買い取っていくという取り組みを始める。
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