c. 税金
まずはドイツの家庭用電気代の傾向を把握しよう。
富士通総研の上席主任研究員である梶山恵司氏は、2012年9月に「再生可能エネルギー拡大の課題−FITを中心とした日独比較分析」と題した研究レポートを発表している。同レポートでは「(ドイツは)2009年からの太陽光の急拡大により家計の負担が増している」「ドイツの家庭の電気代の推移をみると、2000年の14セント/kWhから、2011年には25セントへと大幅に上昇してきている」と指摘しており、電気代の上昇傾向は確実だ。
ただし、最大の原因は再生可能エネルギーではないようだ(図1)。図1では電気料金の内容を6種類に分解して傾向を見せている。2011年の数値を見ると、FITの原資である「再エネ買取」(白色)は3.53セント/kWhであり、総額の25セントのうち14%を占めるにすぎない。従って、回答選択肢のうち「a. 太陽光発電」と「b. 風力発電」は誤りだ。
梶山氏はドイツの家庭用電気代を日本の電気代と比較している(図2)。1ユーロを当時の120円で円換算し、日本の料金の例として東京電力の場合を挙げている。図2では電気代を税金、再生エネルギーの買取、その他に分けて示した。
まず、電気料の絶対値を見るとドイツの方が高い。ドイツの30円に対して、東京電力は26.7円だからだ。従って、回答選択肢の「e. 実は高くない」は誤っている。再生エネルギーの買取を見ると、ドイツが4.3円、東京電力が0.3円なので、ドイツの方が14倍以上高い。しかし図2で重要なのはそこではない。もともと安価なドイツの電気代(16.3円)を高額(30円)に変えているのは税金だという点が重要だ。
日本の場合、電気代に掛かる税金は消費税(5%)のみ。ところが、梶山氏によれば、ドイツでは付加価値税(16%)、電気税(8%)、自治体税(7%)が加わり、合計して31%である。
選択肢「d. 電力の輸入」についてはどうだろうか。これも正しくない。ドイツ連邦統計局が2013年4月に発表した統計によれば、2012年にドイツが欧州電力ネットワークへ輸出した電力量は、金額ベースで見て、14億ユーロであり、黒字だからだ(関連記事)。
輸出入で黒字になったのは2012年だけなのだろうか。そうではない。2003年から10年連続して電力の純輸出国になっている。
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