中海を望む「池」に浮かべる、干拓地にもメガソーラー自然エネルギー

島根県安来市に位置する干拓地。干拓地内の農地に水を供給する調整池は5haと大きい。安来市土地改良区は、この調整池に浮かべるタイプのメガソーラー事業者の募集を開始した。容量は2MW程度となりそうだ。

» 2013年10月22日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 島根県安来市と中海(青)、発電所の位置(赤)

 スマートジャパンではこれまで何度か、池に浮かべる方式の太陽光発電システムを紹介してきた。実証実験では兵庫県小野市(関連記事)があり、売電事業に至った例では埼玉県桶川市(関連記事)がある。いずれも池が多数散らばる地域での試みだった。

 島根県安来(やすぎ)市の安来市土地改良区が募集するメガソーラー事業は多少事情が異なる。中海(なかうみ)の干拓地を利用するメガソーラー事業だからだ(図1)。

 中海は日本で猪苗代湖に次ぎ5番目に大きく、4つの市、島根県松江市、安来市と鳥取県境港市、米子市にまたがる汽水湖だ。最も深いところでも17.1mしかないため、戦後に幾つもの干拓事業が進んだ。中海の南東、米子市に近い安来工区(204ha)もその1つ(図2)。1968年から1988年にかけて干拓事業を推進し、その後、順次農家が入植、2009年に最後の付帯施設が完成した。農地部分は71haある。

図2 安来工区(島根県安来市)の位置図。出典:安来市土地改良区

 今回、メガソーラー発電事業を募集したのは図2のうち、黄緑色の斜線部分だ。この部分は農地ではなく「調整池」だ。外部からの農業用水を受けて、周囲の農地に水を供給する働きがある。面積は約5.0haあり、形状はほぼ長方形。「農業用水を大規模に利用することはないため、水位の変動は±0.5mだと考えている」(安来市土地改良区)。水深は位置によって10%程度異なる。東堤に面した位置では3.3mだ。

発電事業としてのハードルは?

 メガソーラーの出力は、資源エネルギー庁の「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」に従っていれば自由に決めてもよい。ただし、安来工区は工業地帯ではないため、あまりにも容量が大きなメガソーラーは系統に接続できない。「中国電力との系統連系協議は応募した事業者の責任で進めてもらう。なお、既に調査した事例があり、特別高圧送電線が不要な2MW以内であれば設置が可能なようだ」(同区)。

 メガソーラーを敷設する際、今回はフロート(浮体構造物)方式を採らなければならないと定めている。課題は太陽電池モジュールを載せたフロートの固定方法だろう。「漏水を防ぐために湖底にはアスファルトシートなどを敷いている。このため、湖底にアンカーなどを打ち込むことはできない」(同区)。強風に襲われる地域ではないものの、アンカー打ち込み以外の方法でフロートを固定する必要がある。

 募集内容のうち、完成後に事業者の負担になる点は大きく2つある。1つは地代に相当する年間貸付単価だ。20年間にわたり、1m2当たり70円以上を支払う必要がある。貸付期間は20年を確保できそうだ。「土地改良法の制限にかかわらず、使用協定を結び、20年の貸付を約束する形をとる」(同区)。

 もう1つは、調整池内の水草と斜面の雑草の除草処分、ゴミの収集処分が事業者負担となっていることだ。

 事業者の募集期間(企画提案書提出締め切り)は2013年11月1日まで。その後11月20日に企画提案書の提案を受け付け、11月29日に土地貸付候補者を決定するスケジュールだ。決定後は2014年度中のなるべく早い時期に着工する必要がある。

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