土地がなければ「ため池」を使う、水に浮かべて使う太陽電池自然エネルギー

兵庫県の南西部にはため池が目立つ。ため池に水を満たしたまま他の用途に用いることは難しい――このような常識を覆すのが水に浮かぶ太陽電池だ。ノウハウがほとんどない分野であることから、まず、小規模な実証実験で可能性を探る。

» 2013年07月11日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 兵庫県小野市の位置

 兵庫県には全国一のものがいろいろある。建築物だけをとっても、世界最長の吊り橋「明石海峡大橋」(淡路市、神戸市垂水区)や日本最古の重力式コンクリートダム「布引五本松ダム」(神戸市中央区)、現存する鋳鉄製の最古の橋「神子畑鋳鉄橋」(朝来市)などの名が挙がる。

 もう少し身近な例では「ため池」だ。兵庫県、特に南西部の播磨地方には4万3000カ所もの農業用ため池が散らばる。全国のため池の2割が集まっている計算だ。

 兵庫県はこのため池の水面を再生可能エネルギー源として使うため、水に浮かぶ太陽電池を使った「フロート式太陽光発電の実証実験」を2013年7月15日から小野市で開始する(図1)。水面は整地された土地とは異なる。波風の影響を受け、水位も変わる。これらの影響を調べるのが目的だ。

図2 小野市の浄谷新池の周辺写真。出典:兵庫県

 実証実験は、小野市の浄谷新池(満水時の面積2.4ha)で進める(図2)。発電システムに求められる条件を調べるため、2パターンの浮体(フロート)を使う。搭載する太陽電池モジュールの傾斜角と、フロートの係留方法を変える。どちらも9つのフロートに太陽電池モジュールをそれぞれ80枚(出力20kW)搭載する。

 パターン1では、モジュールの傾斜角を10度に抑えた。フロートの総面積は232m2である。フロートは陸地からワイヤーで係留する。

 パターン2(図3)では、モジュールの傾斜角を20度に増やす。フロートの総面積はパターン1よりも10%広い256m2だ。パターン1との発電量の差や、波風から受ける影響を比較する。パターン2ではフロートの四隅から池の底に沈めた重りへ係留する。ため池の水位変動にどの程度追従するか、強風時の安定性はどうかをパターン1と比較する。

 なお、パターン1、パターン2とも散水装置を試験的に利用する。フロート中央部に散水装置を設置し、散水の冷却効果と発電量の関係、モジュールの汚れへの影響を観察し、実運用時に散水装置が必要かどうかを調べる。

図3 パターン2のうち1つのフロートを抜き出したところ。出典:兵庫県

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