どうなるエネルギー政策、ベストミックスを決める4つの動き法制度・規制(2/2 ページ)

» 2013年11月11日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
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洋上風力と水素エネルギーも見逃せない

 ベストミックスを決めるうえで重要な第3の動向は、再生可能エネルギーの拡大だ。2012年7月に始まった固定価格買取制度によって、太陽光を中心に新しい発電設備が一気に全国へ広がってきた。水力を加えると、2012年度には全発電量のうち10%を再生可能エネルギーが占めている(図3)。

図3 電力会社10社の年間発電量と電源構成比。出典:電気事業連合会

 この比率を今後どのくらいのペースで伸ばせるか。未知の要素が多い中で、ひとつのターニングポイントが2015年度に訪れる。固定価格買取制度を普及させるために、最初の3年間は買取価格を高めに設定することになっている。4年目の2015年度からは買取価格が下がって、初期のブームが過ぎ去った状態に入る。長期的な導入量の予測が可能になるだろう。

 一方で2015〜16年には、新しい再生可能エネルギーの実用化にもめどがつく。浮体式の洋上風力と水素エネルギーの2種類に関して、商用ベースの大規模な発電設備が稼働する予定だ。ベストミックスの中で、洋上風力と水素が再生可能エネルギーの比率を押し上げる可能性がある。

小売の全面自由化で火力発電が増える

 最後に4番目の動きとして、電力市場を変革する「小売全面自由化」が2016年に始まる。小売事業者が拡大することによって、発電事業者も増えていく(図4)。さらに電力会社の発電・送配電・小売事業を分割する「発送電分離」が2018〜20年に実現する予定で、そのための法改正を2015年に実施することになっている。

図4 小売全面自由化による電気事業者の変化。出典:電力システム改革小委員会

 新規に参入する発電事業者は、コストが安い火力を採用するケースが多くなるだろう。ガスか石炭のどちらかを使えば、価格が高い石油を併用する電力会社に対して価格競争で勝負できるからだ。そうした動向も法改正が完了する2015〜16年になれば明確に見えてくる。

 4つの動きを総合すると、2020〜30年のベストミックスは火力が中心になることは確実だ。1年前に作られた6種類のシナリオ(前ページの図2)のうち、2020年に原子力の比率がゼロになる「選択肢(1)」と2030年にゼロになる「選択肢(1)’」の中間に落ち着くと考えるのが妥当だろう。

 2020年の段階では、原子力が0〜14%、火力は61〜75%、再生可能エネルギーは水力を含めて19%になる。原子力と火力の変動範囲が14%もあるが、どのあたりに落ち着くかは今後の3年間で決まる。

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