今後の電力ネットワークのかなめになるスマートメーターをめぐって、電力会社とメーカーの動きが活発になってきた。先行する関西電力は富士通の無線通信技術を採用済みで、その技術が国際標準になる可能性が出てきた。一方で東京電力の通信部分は東芝が開発中だ。東西の仕様を統一できるか。
スマートメーターのネットワークで中核になる無線通信の規格として、富士通の技術が国際標準化のプロセスを進み始めた。この無線通信技術は関西電力が採用しているもので、すでに約200万台のスマートメーターに組み込まれている(図1)。
富士通が「無線アドホック通信技術」の分野で独自に開発したもので、インターネット技術の国際的な標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)から承認を受けた。IETFでは標準的な技術仕様に対してRFC(Request For Comments、コメント募集)と呼ぶ方法で広く意見を収集する方法をとっていて、RFCの次に国際標準化のプロセスへ移行する。
無線アドホック通信は家庭や企業に設置した多数のスマートメーターを経由してデータを転送する方法である(図2)。送信データは最終的に集約装置に集められてから、電力会社のデータセンターへ送られる仕組みだ。従来の無線アドホック通信では1台の集約装置で数十台しか対応できなかったが、富士通の技術によって1000台以上を接続できるようになり、大幅なコスト削減が可能になった。
各電力会社はスマートメーターの通信ネットワークに複数の方式を併用して、設置環境に適したデータ送信を可能にする方針だ。東京電力の場合は「無線マルチホップ」「電力線通信」「携帯」の3方式を予定していて、このうち無線マルチホップが富士通の技術に相当する(図3)。3つの方式の中でも家庭を中心に無線マルチホップが使われる見込みだ。
東京電力の通信ネットワークは公募の結果、東芝が受注して開発中である。無線マルチホップも開発項目の中に含まれている。東芝が富士通の技術を採用すれば、全国の仕様を統一できる状況になってきた。
東京電力は2014年度に調達するスマートメーターの第1弾として、標準タイプの製品をメーカー3社から調達することを決めた。3社はGE富士電機メーター、東光東芝メーターシステムズ、三菱電機である。富士通の筆頭株主である富士電機と東芝のグループ会社が含まれていることから、スマートメーターの通信部分の実証技術が注目される。
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