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» 2013年12月17日 16時40分 公開

3Dプリンタだけが革命ではない、製造コスト低減に役立つ印刷技術蓄電・発電機器(2/2 ページ)

[畑陽一郎,スマートジャパン]
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リチウムイオン蓄電池も印刷で作る

 同社は形状の自由度が高く、大容量のリチウムイオン蓄電池を開発した(図3)。具体的には厚さが1mm程度で、600mm×300mmというフィルム状の蓄電池だ。民生用や住宅用の定置向け、自動車用などを狙う。

 同社が開発したリチウムイオン蓄電池は従来品と比較して、体積エネルギー密度と重量エネルギー密度がそれぞれ約3倍、高い。体積エネルギー密度は1L当たり900Whに達する。薄く、軽い蓄電池が実現できる。

 エネルギー密度改善のために負極材料を採用した。一般的なリチウムイオン蓄電池では負極にグラファイト(炭素)を使う。開発品ではシリコン(Si)系の物質を用いた。電極との界面や負極材料の表面に形成する被膜(Solid Electrolyte Interphase:SEI膜)を工夫することで、導電性を高め、出力を向上させた。

図3 開発したリチウムイオン蓄電池。エコプロダクツ2013で展示したもの

 薄い蓄電池を低コストで製造するには、印刷プロセス(塗工プロセス)が向いている。「大面積の蓄電池を製造しようとすると、電解質の改善が必要だ。液体の電解質を使うと、注入のために真空引きをしなければならず、タクトタイムが掛かる(生産に必要な時間が長くなる)。そこで、短時間で均一に塗ることができるゲル電解質を採用した」(同社)。

 塗工プロセスを採用することによって、同社の従来技術と比較して、生産性が約10倍に高まったという。「塗工速度については具体的な数字は明らかにできないものの、たとえ話で示すことはできる。カラープリンタから用紙がにじみ出るように少しずつ出力されてくるのではなく、すっと出てくるような速度だ」(積水化学工業)。現在は1mまでの長さのものを作ることができた(図3の左上に巻いたもの)。

 ただし、ゲル電解質には課題がある。電解質は負極から正極へ、また正極から負極へリチウムイオン(Li)が移動するときの通り道となる。リチウムイオンが素早く移動できないと、充電時間が長くなったり、一度に取り出せる電力(出力、パワー密度)が下がったりしてしまう。一般にゲル電解質は液体の有機電解質と比較してリチウムイオンが移動しにくい。「ゲル電解質を使うとリチウムイオンの輸率は1桁から2桁も悪化してしまう」(同社)。

 そこで、リチウムイオンが移動する際に周囲に集まる陰イオンを「一部排除」するようなゲルの分子構造を作り込み、抵抗を下げた*1)。これによって、従来のゲルタイプ電解質と比較して、リチウムイオンの伝導度が自社比で約10倍に高まったという。「液体の有機電解質と比較しても遜色のない性能を実現できた」(同社)。

*1) 「リチウム塩の解離を邪魔せず、ポリマーの側鎖がリチウムイオンをトラップしにくい構造を開発した。リチウムイオンと陰イオンの複合体のままではなく、そこからリチウムイオンが外れるような構造だ」(同社)。

 大量生産に至る道のりはどのようなものになるのだろうか。「特別な製造装置をなるべく使わず、汎用の装置で製造できるようなプロセスを採用する。リチウムイオン蓄電池は製造時に乾燥した環境(ドライ環境)が必要だ。この条件を緩めることで、イニシャルコスト、ランニングコストとも低い製造プロセスを確立していく」(同社)。これにより、量産時には他社とのアライアンスが組みやすくなり、工場への設備投資を抑えることができる。

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