「ダム」の新しい用途を開拓、ひと味違う兵庫県の発電事業自然エネルギー(1/2 ページ)

兵庫県企業庁は所有地を利用して10カ所に11の大規模太陽光発電所を立ち上げ、発電事業を拡大していく。特徴的なのはダムを利用した太陽光発電所だ。一部のダムにある、太陽光発電所に向いた性質を生かす。

» 2014年01月10日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 兵庫県加古川市と発電所の位置

 水道用水や工業用水、土地などを供給する兵庫県企業庁は、ダムを使った発電にも取り組む。ただし、水ではなくダムの構造そのものを使う。

 ダムにはさまざまな種類がある。コンクリートで形作られたアーチ状の構造が有名だが、それだけではない。兵庫県加古川市にある平荘(へいそう)ダムは、アースダムと呼ばれる形式を採る(図1、図2)*1)。台形状に盛り土を作り、水をせき止める仕組みだ。この盛り土の斜面(のり面)を使う。

*1) 50年前に着工した平荘ダムは3つのアースダムと、1つの重力式コンクリートダムが、平荘貯水池(面積1平方km)の周りを一部取り囲むような構造を採る。発電に使うのは第1ダム(堤高26.0m、堤長570.0m)。

図2 平荘ダムの外観。第1ダムの部分を太陽電池の色に塗った完成予想図。出典:兵庫県企業庁

自然な「角度」が役に立つ

 「平荘ダム(第1ダム)ののり面(斜面)には3段階の勾配があり、18〜26度だ。水面に近付くにつれて角度が付く」(兵庫県企業庁水道課)。この角度が役立つ。平地に太陽電池を敷き詰める場合、太陽光をなるべく正面から受けるために、30度程度の角度を付けて設置する。すると図3の左に示したように、太陽電池が作る影を避けるために間隔を空けなければならない。図3の右のように傾斜地に設置すると影ができないため、密集して設置できる。土地面積当たりの出力が高くなるのだ。太陽電池を設置する平荘ダム(第1ダム)は、ほぼ真南を向いており、発電に都合がよい。

図3 太陽電池の設置に役立つ斜面 出典:兵庫県企業庁

 このような手法は、他の用途に利用できない土地を使い、植生に影響を与えないという利点もある(図4)。なお、平荘ダムは工業用水を供給するためだけに利用されており、そもそも発電する機能は備えていない。

図4 平荘ダム(第1ダム)ののり面に太陽電池モジュールを敷き詰めた完成予想図。堤上から見たところ。出典:兵庫県企業庁
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