「湯」と「電力」が欲しいホテル、2つの技術を組み合わせて燃料代を半減自然エネルギー(1/2 ページ)

木質バイオマスを利用して大規模な発電を進める企業は少なくない。だが、用途によっては温水などの熱を主に確保し、少量の電力が必要な場合もある。福島ミドリ安全はIHIのバイナリー発電機を採用することで、このようなニーズに応えるシステムを作り上げる。

» 2014年01月17日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 福島県南会津町とホテルの位置

 「木を燃料とするバイオマスボイラーの新しい使い方を企画し、給湯に加えて発電が可能なシステムを福島で作り上げる。国内初の試みだ」(福島ミドリ安全)。森林面積が90%を超える福島県南西部の南会津町、標高1000mに立地するホテルが舞台になる(図1)。

 同社は二酸化炭素の排出量が少ないカーボンオフセット衣類などを扱う企業。ホテルへの熱供給に加えて、電力をも供給するシステムを作り上げる。「もともとA重油や灯油を利用していた会津アストリアホテルにシステムを導入することで、燃料代を40〜50%節減*1)できると考えている」(同社)。同ホテルはたかつえスキー場に隣接するリゾートホテルだ。部屋数は48。

*1) 2013年6月時点で林野庁の補助事業として公開された「木質バイオマスボイラー導入・運用にかかわる実務テキスト」によれば、1kWh当たりのエネルギー価格はA重油が80〜85円/Lの場合、8円弱、灯油が9円であるのに対し、木質チップは1トン当たり1万2000円(水分35%のスギ換算で約6000円/m3)だとして、4円弱である。つまり燃料コストは半額で済む。

 大本の熱源はボイラー2基(合計出力1000kW)。ここで木質バイオマスを燃焼させ、ホテルの暖房、給湯、浴室加温に使う熱を取り出す。熱(温水)の一部を、小型バイナリー発電機に通じ、ホテルで利用する電力の一部をまかなう形だ。

 燃料として木質チップを年間2900m3使う。同社が南会津町や町内の森林組合などと共同で設立した南会津町地域エネルギー協議会が木質チップを供給する。

新規性が評価された

 今回の事業は、林野庁の「平成25年度木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」を福島ミドリ安全が受託して進めるもの。他に全国で10以上の企業がさまざまな事業を受託している。

 福島ミドリ安全の事業は、木質バイオマスボイラーと小型バイナリー発電装置を組み合わせた地域熱電供給プロジェクトという点に特徴があり、受託に至ったという。同社は2013年度から2015年度まで、実証試験を続ける。2013年度に施設の一部を整備し、2014年度中に運転を予定している。「今回の事業は請負ではなく、実証事業である。木質チップの費用を含め、年間2億円を要し、林野庁の整備事業の補助金で全額をまかなう」(同社)。

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