電力システム改革を担う「広域機関」、設立準備組合が1月30日に発足電力供給サービス

2014年度から始まる電力システム改革の第1弾は、新たに「広域的運営推進機関」を設立して、電力会社の枠を越えた需要と供給の調整機能を実現することにある。その広域機関を設立するための準備組合が1月30日に発足する。メンバーには新電力や発電事業者を含む30社以上が参加する見通しだ。

» 2014年01月22日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 設立準備組合の発足を前に「広域的運営推進機関の発足に向けた検討会」が立ち上がり、電力会社では関西・中部・東北の3社がメンバーに入った(図1)。このほかに新電力(特定規模電気事業者)から最大手のエネットを含む9社、発電事業者は東京ガスと大阪ガスを加えた7社が参画して、組合の運営体制などを検討してきた。

図1 「広域的運営推進機関の発足に向けた検討会」の参加企業(2014年1月20日時点)。出典:電力システム改革小委員会

 1月30日に発足する設立準備組合には、検討会のメンバーである26社・団体のほかにも事業者が増える見通しで、国内の電力の3割以上を供給する東京電力の参加も予想される。主要な事業者で構成する組合を通じて実務的な準備を進めながら、7月をめどに「広域的運営推進機関」を設立する予定だ(図2)。

図2 設立準備組合と広域機関の活動スケジュール。出典:電力システム改革小委員会

 広域機関の最も重要な役割は、これまで地域ごとに電力会社に任されていた需給計画を全国レベルでとりまとめたうえで、毎日の需要と供給のバランスを最適化することにある。需給状況に応じて地域間の電力融通を機動的に調整するほか、発電事業者や卸電力市場からの流通量を増やして小売事業者の供給不足を回避する役割も担う。

 このために100〜200人規模の人員を集めて、計画と運用の専任部門を設置する(図3)。広域機関が全国レベルの需給調整機能を一元的に果たすことができれば、現在の電力会社を中心にした硬直的な市場構造から、数多くの発電事業者や小売事業者が効率的に電力を供給できる柔軟な市場構造に変わっていく。

図3 広域機関の組織構造と要員規模のイメージ。出典:電力システム改革小委員会

 設立後の広域機関は2014年度末までに体制を整備したうえで、2015年4月にも業務を開始する計画だ。さらに需給調整に必要な情報システムの開発を並行して進める予定で、2015年度末までにはシステムによる自動化を実現して調整業務のスピードアップを図る。

 2016年には改革の第2弾として、家庭を含む小売の完全自由化が実施される。続いて2018〜2020年には第3弾として、電力会社の発電・送配電・小売事業を分割する「発送電分離」が予定されていて、この段階で電力市場は3つの分野の事業者に再編されることになる。

 一連の改革を円滑に進めるための基盤づくりを担うのが第1弾の広域機関である。その使命を計画通りに果たせるかどうかで、電力システム改革の成否が大きく左右される。失敗や遅延の許されない重要なプロセスがいよいよ始まる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.