電力を使ってガスよりも6割安く、高効率のヒートポンプを東電と関電が共同開発省エネ機器

東京電力と関西電力がガス会社に対抗する新商品を共同で開発した。大量の温水と冷水を使う工場などを対象にしたシステムで、空気熱を利用するヒートポンプを高効率にして消費電力を引き下げた。ガスを使うシステムと比べてランニングコストが6割も減ることをアピールする。

» 2014年01月29日 12時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 新開発のヒートポンプ「HEM-3WAY」。出典:神戸製鋼所

 新システムの開発には東京電力と関西電力のほかに、ヒートポンプメーカーとして神戸製鋼所が加わった。2014年4月から「HEM-3WAY」の商品名で神戸製鋼所が販売する(図1)。東京電力と関西電力はガス会社に対抗する商品として、東京・大阪の両地区で顧客獲得に注力する構えだ。

 ヒートポンプは家庭のエアコンや冷蔵庫にも使われている熱交換の仕組みである。電力やガスを利用して熱を伝導する媒体の温度を上げたり下げたりしながら、温風と冷風、さらに温水と冷水を作り出すこともできる。

 3社が開発した新システムは、最高85度の温水と最低5度の冷水を同時に供給できるようにした。最も効率が良くなる温水75度と冷水7度の場合には、消費電力に対する熱エネルギーの供給能力が5倍になり、高い省エネ性能を発揮する(図2)。

図2 ヒートポンプの導入イメージ。出典:神戸製鋼所

 販売元の神戸製鋼所はガスを使ったシステムとの比較データも公表した。ガスでもヒートポンプによる給湯や冷暖房が可能だが、大量の温水と冷水を必要とする工場を想定して、ガスボイラーと冷凍機を組み合わせたシステムと比較している。

 それによると、新システムはエネルギー消費量がガスと比べて6割も削減できて、ランニングコスト(光熱費)が同様に6割近く安くなる(図3)。大幅なコスト削減が可能になることをアピールして導入企業を増やしていく狙いだ。

図3 ガスと比べた導入効果。出典:神戸製鋼所

 東日本大震災を契機に電気料金が値上がりしていることもあって、代替エネルギーとしてガスを導入する企業や家庭が増えている。電力会社は厳しい競争を迫られる状況を打開するために、ガスの顧客を獲得する施策にも力を入れ始めた。

 東京電力は先ごろ発表した「新・総合特別事業計画」の中で、10年後の2022年度にヒートポンプなどの「熱源転換」で4000億円、ガス設備の販売などでも1760億円の売上計画を盛り込んだ。電力会社とガス会社の競争が激化することにより、利用者にはコスト低下とサービス向上のメリットがもたらされる。

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