太陽光×蓄電池=電気バス、北九州市で営業運転へ電気自動車(1/2 ページ)

「世界の環境首都」「アジアの技術首都」をうたう北九州市で、再生可能エネルギーのみを使う電気バスが走る。出力7.5MWのメガソーラーで発電し、大型蓄電池に充電、新型充電器で高速充電する。北九州で未来の車社会の姿が見えるのだろうか。

» 2014年02月13日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 北九州市と若松区、発電所(青丸)と小倉駅(赤丸)の位置

 メガソーラーで発電した電力を定置用大型蓄電池システムに充電、その電力を使って大型電気バスを営業運転する。「創る」「貯める」「使う」がそろった先進的な取り組み「ゼロエミッション交通システム」の運用が北九州市で始まる*1)(図1)。二酸化炭素(CO2)を排出せず、再生可能エネルギーだけで市営バスが動く。

 総事業費はメガソーラーと充電器、2台の電気バスを含め27億円*2)だが、「北九州市交通局の負担は少ない。通常市営バスでも必要な運行費用の他、燃料の代わりの電気代などに限られる」(北九州市港湾空港局立地促進課)。

 ゼロエミッション交通システムに参加するのは、電気バスを運行する北九州市の他、国内の3企業と韓国の1企業だ。メガソーラーを所有し、事業を運営するのは、HKK&TEK合同会社。ひびき灘開発(HKK)と東レエンジニアリング(TEK)が設立した企業であり、システム全体を構築する。ひびき灘開発は事業に必要な土地の地権者でもある。

 東レグループはHKK&TEKから発注を受け、メガソーラーの設計・調達・建設(EPC)と完成後の管理・運営(O&M)を担う。受電設備と蓄電設備の整備、運営にも取り組む。電気バスに利用する原材料も供給する。

 三菱重工業は定置用大型蓄電池システムを導入する他、電気バスに搭載するリチウムイオン蓄電池(MLiX)も供給する。電気バスの供給元でもあり、北九州市に技術協力する。

 「韓国ファイバーはカーボンファイバーの成形を手掛ける企業だ。今回は東レグループや三菱重工業から部品の供給を受け、電気バス全体の組み立てを担当する」(立地促進課)。ゼロエミッション交通システムが国内で首尾良く普及した場合は、この日韓国際水平分業体制を生かすもくろみだ。韓国から日本へのベース車両の輸送を考えると、韓国側積出港となる釜山港から約200kmの距離に位置する響灘地区は、日本側の輸入拠点として有利だという。

*1) 国土交通省の「地域交通グリーン事業」の支援を受けて電気バスを導入する予定だ。
*2) 定置用大型蓄電池システムに必要な費用は含まれていない。

まずはバスの運行を優先する

 ゼロエミッション交通システムの拠点は、北九州市若松区響灘地区(図2)。営業運転を行う区間の候補は2つある。緑色で示したJR九州戸畑駅とエコタウンセンターを結ぶ「路線1」の営業距離は9km、赤色で示した若松区役所とJR九州小倉駅を結ぶ「路線2」は同10kmだ。「空調を使わない場合、採用する電気バスは充電1回当たり、80km走行できる。営業運転区間では、1日2往復4便を走らせる。従って、計算上、充電は1日1回で済む。実際にそうなるのか、営業運転を通じて調べていく」(立地促進課)。

図2 バスの運行路線と発電所の位置 出典:北九州市

 ゼロエミッション交通システムの構成要素は多い。全てが完成するのを待っていては営業運行が始まらない。そこで、2014年3月ごろ、電気バスが利用可能になった時点で、系統電力(九州電力)を利用し、運行を開始する。

 2014年10月ごろ、図2左上の位置にメガソーラー(出力7.5MW、敷地面積9ha)が完成した時点で太陽光発電を利用したバスの運用を始める。天候や充電の時刻によっては太陽光発電が利用できない場合があるため、系統電力と併用する。

 定置用大型蓄電池システムは2015年4月ごろに完成する。このときゼロエミッション交通システムが完成する形だ。「蓄電池の容量は未定だが、少なくとも電気バス1回の充電に必要な電力量を供給できるものを考えている」(立地促進課)。三菱重工業が製品化したコンテナ型蓄電池などの採用が考えられるという。

 図3に以上のスケジュールと利用する設備をまとめた。急速充電器はまず北九州市交通局の若松営業所に1台を設置し、メガソーラーが利用できるようになった段階でもう1台を増設する。三菱重工業によれば、専用に開発した急速充電器を利用するため、国内で標準的なCHAdeMO規格の装置と比較して、約半分の時間で充電できるという。

図3 運営スケジュールと利用する設備 出典:北九州市
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