電力とガスの小売全面自由化を前に、大阪ガスグループが発電設備を増強する。愛知県の火力発電所の隣接地に、石炭と木質バイオマスを混焼できる火力発電設備を新設する計画だ。2016年度の下期に運転を開始する予定で、グループが保有する発電設備は国内で約200万kWの規模になる。
大阪ガスが2014〜2016年度の新中期計画で「電力事業の全国展開」を宣言した。ガスと電力を組み合わせたエネルギー事業を拡大する狙いで、全国各地に発電設備を展開していく計画だ。その第1弾として、愛知県の武豊町にある「中山名古屋共同発電 名古屋発電所」の隣接地に火力発電所を新設する(図1)。
名古屋発電所は大阪ガスグループのガスアンドパワーの子会社が運営する石炭火力の発電所で、15万kWの発電能力がある。隣接地に新設する火力発電設備は石炭に木質バイオマスを30%混焼させる方法により、実質的なCO2排出量を大幅に削減できる見込みだ。発電能力は11万kWで、2016年度の下期に運転を開始する。
大阪ガスはグループ全体で国内に180万kW、海外に140万kWの発電設備を保有している(図2、図3)。この発電規模を2020年代に600万kWまで拡大する構想を新たに打ち出した。LNG(液化天然ガス)、石炭、再生可能エネルギーの3分野に重点を置いて開発を進めていく。特にLNGと石炭は発電コストが安いことから、早急に設備を増強して電力会社に対抗する構えだ。
2009年には大阪府にあるガス製造所の中に110万kWの「泉北天然ガス発電所」を完成させて、電力の供給体制を一気に拡大した。ガスと電力のコスト削減を図るために、米国産のシェールガスの調達にもいち早く取り組み、中部電力と共同で2018年に輸入を始める予定だ。
一方で1997年にガスアンドパワーを設立して、関西電力向けの電力卸供給事業を開始した。さらに2000年にはNTTファシリティーズと東京ガスの3社共同で新電力のエネットを設立して、電力小売事業にも進出している。今後はガスアンドパワーの電力を含めてグループの小売事業に活用する。
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