オランダ型システムとガスエンジン、農業に必要な3つの要素を満たすエネルギー管理(1/2 ページ)

北海道に「スマートアグリ生産プラント」が立ち上がる。ハウス農業に必要な熱と電力の他、二酸化炭素を供給することで、生産能力を高める方式だ。JFEエンジニアリングとアド・ワン・ファームが取り組み、トマトや葉野菜を生産する。

» 2014年03月25日 17時40分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 農業は化石燃料に強く依存している。特に温度調節が必要な温室やビニールハウスは重油なくしては立ちゆかないほどだ。農業環境技術研究所によれば、年間10a(アール)当たり、重油2014L、灯油234L、ガソリン65L、電力1075kWhを消費している。二酸化炭素(CO2)の排出量は年間7.228トンだ*1)

*1)「農業生産過程におけるエネルギー消費およびCO2排出量の把握」(山口武則他、1995年)。

 このことから、省エネルギー技術を適用して成功を収めている製造業と同様、農業にも同様な技術が必要だと分かる。再生可能エネルギーや排熱利用も有望だろう。このため、IT関連企業やエネルギー関連企業、プラント関連企業など、これまで農業とはあまり関連がなかった企業が、農業に参入する動きを見せている。

オランダ型の高度な技術を導入

 Jファーム苫小牧は、オランダ型高度栽培制御システムと、ガスエンジントリジェネレーション技術を利用した、多様品種の通年栽培を始める(図1)。同社は、プラント生産に強みがあるJFEエンジニアリングと、リーフ栽培技術や農場操業ノウハウに強いアド・ワン・ファームが共同で設立した企業だ。

図1 JFEスマートアグリシステムのコンセプト 出典:JFEエンジニアリング

 「オランダ型高度栽培制御システムとは、太陽光を生かした大規模温室を利用して、ITで環境を制御し、一年を通じた収穫を可能とするものだ」(JFEエンジニアリング)。土壌を使わない水耕栽培に取り組む(図2)。

 天候データと温室内の環境データを統合環境制御装置に入力し、作物に必要な環境と比較、温室内の環境をフィードバック制御し、必要な養分や二酸化炭素量を保つ。

図2 オランダ型高度栽培制御システムを実現する構成 出典:JFEエンジニアリング

 二酸化炭素の量はどうやって保つのだろうか。ガスエンジントリジェネレーションの出番だ(図3)。「当社のJFE-Waukeshaガスエンジン『VGF230』を設置、北海道ガスからガスの供給を受け、電力と熱を生み出す。排ガスから二酸化炭素を分離して、温室に供給する」(JFEエンジニアリング)。「トリジェネレーション」とは、コジェネレーションの電力、熱に加えて二酸化炭素を作り出すという意味だ。国内初の大規模事例だという。

 都市ガスは燃焼後に不純物をあまり含んでいないものの、有害物質を分離する工程を設けた。「温室内の二酸化炭素濃度は大気中の約5倍に相当する2000ppmに維持する」(同社)*2)。現在の大気中の二酸化炭素濃度は、植物の光合成が最も進みやすい濃度よりも低いからだ。

*2) なお、労働衛生上の許容濃度は5000ppmである(8時間労働の場合)。

図3 トリジェネレーションの概念 出典:JFEエンジニアリング
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