被災地に電力監視制御システム、年間の電気料金を1000万円以上も削減エネルギー管理

福島県の伊達市がクラウド型のBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入して、年間に1000万円以上の電気料金を削減する計画だ。市内の小中学校を含む32カ所の施設の電力使用状況を集中管理しながら、需要がピークに達した時には空調や照明を自動的に制御して使用量を抑制する。

» 2014年05月08日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 伊達市の位置。出典:伊達市生活環境課

 福島県の北部にある伊達市(図1)では、東日本大震災の直後に最大で5日間の停電が発生した。事故を起こした福島第一原子力発電所からは30キロメートル以上も離れているが、市内の広い範囲で放射性物質の影響を受けて現在も除染対策を続けている。

 復興に向けて「伊達市再生・発展まちづくりグランドデザイン」を策定して、5つの重点戦略の1つに「省エネ・創エネによる環境にやさしい地域づくりの推進」を掲げた。その具体策として市の公共施設や小中学校に電力監視制御システムを導入して、2014年4月から部分的に運用を開始した(図2)。

図2 伊達市の電力監視制御システム。出典:富士通

 対象になる施設は合計32カ所で、富士通のクラウド型サービス「Enetune-BEMS」を利用する。各施設に設置した電力監視ユニットから使用量のデータを収集して、クラウドネットワーク経由で市役所内のパソコンにグラフを表示して一元的に管理することができる。

 さらに毎日の気象情報と過去の電力使用状況をもとに、各施設の電力使用量を30分単位で予測して、あらかじめ設定したピークを超えないようにアラームを出す(図3)。それでも電力の供給量を上回るレベルの需要が見込まれる場合には、各施設の空調や照明をシステムで自動的に制御して停電を防止することが可能になっている。

図3 「Enetune-BEMS」の電力使用量を予測する機能。出典:富士通

 16カ所の公共施設にはデジタルサイネージを設けて、電力の使用状況を市民に伝えながら節電の協力を要請する。このほかに各施設ではLED照明の導入も進めて電力使用量の低減を図る予定だ。一連の省エネ対策によって、伊達市では年間に1000万円以上の電気料金を削減できる見込みである。

 今後も電力監視制御システムの対象施設を拡大して省エネ効果を高める一方、太陽光発電や小水力発電、蓄電池などの創エネ対策も推進して、自律分散型の地域エネルギー供給体制を強化していく。

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