ビルの外装で太陽光発電、換気システムが真夏の日射熱を1割削減スマートオフィス

大林組はビルの外装に使うカーテンウォールに太陽電池を一体化して、新しい実験施設に搭載した。発電した電力を使って、窓に設置した換気システムを動かすことができ、真夏の日射熱を最大で1割削減することができる。「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」に向けた取り組みの1つである。

» 2014年05月09日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 大林組が開発した「太陽光発電外装システム」は、合わせガラスによるシリコン結晶系の太陽電池を採用している。東京都内の技術研究所に建設した新しい実験施設「オープンラボ-2」の外装に導入した(図1)。

図1 太陽電池を一体化した外装カーテンウォール(左)、窓まわりのシステム構成(右)。出典:大林組

 太陽電池は外装カーテンウォールの枠組みの中に庇(ひさし)状に装着することで、視界を妨げず、夏には日よけの効果もある。さらに窓枠にはロールスクリーンと換気システムが設置されていて、太陽光発電の電力で稼働する仕組みだ。

 この換気システムは夏の強い日射によって暖められた窓周辺の空気を屋外に排出して、日射熱を最大で1割削減して冷房効果を高めることができる。冬には換気口をすべて閉じて外気を遮断する一方、春や秋には外気を取り込んで換気する。

図2 オフグリッド方式の太陽光発電制御盤。出典:大林組

 太陽光発電による電力を換気システムやロールスクリーンに供給するために、独自の制御システムも開発した(図2)。制御盤を使って電力を蓄電池に充電しながら、直流を交流に変換してから換気システムなどに供給することができる。電力会社の送配電網に接続しないオフグリッド方式にすることで、BCP(事業継続計画)対策として非常時の電力供給手段に利用することも可能である。

 大林組を含めて建設大手各社は、ビルの消費エネルギーを実質的にゼロ以下にする「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の開発に力を入れている。ZEBを実現するためには、断熱対策や省エネ機器の導入に加えて、太陽光や地中熱などの自然エネルギーを効果的に取り入れる必要がある。大林組は今後オフィスビルや商業施設に太陽光発電外装システムを提案してZEBを推進していく方針だ。

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