山形県と秋田県にまたがる山のふもとで、ダムからの水流を利用した小水力発電所の建設が始まった。発電能力は420kWになり、一般家庭で800世帯分の電力を供給することができる。小水力発電を推進する山形県の企業局が12億円の事業費をかけて、2015年度内に運転を開始する。
「神霊の宿る山」として知られる神室山(かむろさん)は古くからの修行の場だ。山から流れる川の水量を調整するためにダムが造られて、下流に向けて安定した水を放流している。この水流を利用した小水力発電設備の工事がダムの直下で始まった。
山形県の企業局が建設する「神室発電所」は、ダムの放流設備を拡張する方法で発電設備を導入する(図1)。既存の放流ルートを変更して、水車発電機に水を取り込み、発電後に下流へ放流する構造になる。
ダムからの水流は落差が38メートルもある。水量は最大で毎秒1.4立方メートルになる。この水流で水車を回転させて420kWの電力を作り出す。年間の発電量は290万kWhを見込んでいて、一般家庭で800世帯分に相当する。神室ダムがある金山町の総世帯数は1800世帯で、町の電力需要の4割以上をカバーすることができる。
神室発電所の総事業費は約12億円を想定している。発電した電力を固定価格買取制度で売電することによって、年間に約8400万円の収入を得ることができる。買取期間の20年では約17億円になり、運転維持費を加えても十分に投資を回収できる見通しだ。
山形県は震災から1年後の2012年3月に「山形県エネルギー戦略」を策定して、太陽光・風力・小水力を中心に再生可能エネルギーの導入を推進している(図2)。小水力発電は浄水場などの水道設備から導入を開始して、新たにダムにも拡大していく計画だ。神室発電所は山形県が県営ダムに建設する初めての小水力発電所になる。
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