IEAの「世界エネルギー投資予測」によると、2035年までに全世界の発電設備の投資額は年平均で43兆円にのぼる見通しだ。約6割を再生可能エネルギーが占めて、次いで石炭火力が16%、原子力とガス火力が11%で続く。設備コストの点では原子力が圧倒的に高く、ガス火力が最も安い。
IEA(国際エネルギー機関)はOECD(経済協力開発機構)の独立機関で、日本を含む先進国を中心に29カ国が加盟している。2003年以来11年ぶりに「世界エネルギー投資予測(World Energy Investment Outlook)」を発表して、その中で発電設備の今後の動向を分析した。
全世界の電力需要は2014年から2035年のあいだに年率2.2%のペースで増加して、発電設備の容量は1.7倍の9750GW(ギガワット=100万kW)に拡大すると予測している(図1)。そのために5660GWの設備が新設される一方で、現在の3分の1に相当する1850GWの設備が廃止される想定だ。
新設する発電設備のうち5割強の容量を再生可能エネルギーが占める。残りはガス火力が22%、石炭火力が19%と続き、原子力は5%、石油火力は1%台の比率にとどまる。これが世界全体の今後の方向性だ。2035年までの総投資額で見ると、6割強が再生可能エネルギーに振り向けられて、残りは石炭火力が16%、原子力とガス火力が11%になる。
発電容量と投資額で比率に違いが出るのは、容量1kWあたりの設備コストが変動するためだ。地域によって差はあるものの、原子力の設備コストが非常に高くなっている。最も安いガス火力の4倍、再生可能エネルギーと比べても2倍くらい高い(図2)。設備利用率(容量に対する実際の発電量)を高水準に維持できたとしても、コストパフォーマンスの低い発電設備になってしまう。
地域別の投資動向を見ると、原子力に膨大な額を投じるのは中国である。ヨーロッパ全体(東欧を含めて)と同程度の規模で、米国の3倍以上になる(図3)。日本は22年間の累計で1兆2000億円と想定されていて、中国の24分の1に過ぎない。コストパフォーマンスの点からも好ましい傾向と言える。
これに対して再生可能エネルギーの分野では、日本の太陽光発電に対する投資額の大きさが目立つ。米国や中国に匹敵する規模で、22年間に19兆円の投資が見込まれている。実に原子力の15倍以上になる。
ただし世界全体の動向は風力が中心だ。陸上と洋上を合わせて投資額全体の2割強を占めていて、石炭火力の16%を大きく上回る。その次が水力で16%、太陽光は13%と再生可能エネルギーの中では3番目に位置づけられている。
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